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社説

北朝鮮が電磁波攻撃に言及 執拗な脅威の演出に驚く

 米国と同盟国を脅すためなら何でもするという、北朝鮮のあざとさと執拗(しつよう)さに改めて驚かされる。

 3日の核実験に合わせて北朝鮮は「(水爆を)高い空で爆発させ広い地域に電磁パルス(EMP)攻撃も加えられる」と論評した。

 ある国の上空数十~数百キロで核爆発を起こし、強い電磁波によって情報・通信機能や生活上の基盤を破壊することだ。北朝鮮がEMP攻撃に言及したのは初めてである。

 高度数百メートルで核爆発が起きた広島、長崎への原爆投下と違って、EMP攻撃では地上の人々や建物への被害は出ないとされる。

 だが、コンピューター網が発達した社会では物流や医療、交通などがほぼ完全にまひする。しかも完全復旧には年単位の時間を要し、多くの人々が生命の危険にさらされる。

 昨年、米共和党が採択した党綱領は、米国へのEMP攻撃によって数百万人の生命が脅かされるとして北朝鮮の動きを警戒していた。

 他方、米国では北朝鮮の長距離ミサイルは大気圏再突入時の高熱に耐えられないとの見方も有力だった。

 そこで北朝鮮は再突入の必要がないEMP攻撃に言及し、米国への恫喝(どうかつ)をエスカレートさせたのだろう。

 とはいえ、EMP攻撃は決して新しい脅威ではない。1960年代に米国とソ連は大気圏内の核実験によって遠隔地の電気系統などにも広範な障害が出ることに気付いた。

 これが大気圏内、宇宙、水中での核爆発実験を禁じた部分的核実験禁止条約(63年)に結びつく。前年のキューバ危機で核戦争の危機を経験した米ソは、電磁波も含めた核の脅威に一定の歯止めをかけたわけだ。

 2001年の米同時多発テロによって米国の目は再びEMP攻撃に向けられた。米国は同年、専門の委員会を作って金融や防衛など分野別に対策を講じる一方、電磁波から守るために通信網の補強を進めている。

 それに比べて日本の対策はまだまだだ。18年度予算の防衛省の概算要求には「EMP弾に関する研究」(14億円)が盛り込まれたが、万一EMP攻撃を受けた時の原発の安全性など綿密に検討すべき点は多い。

 脅威を演出する北朝鮮の手に乗る必要はないが、社会の安全を守る方策は冷静に立てておきたい。

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