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東日本大震災6年半:「その日」のために 広がる防災の輪

東日本大震災6年半 「その日」のために 広がる防災の輪

 1万8000人を超える人たちが死亡・行方不明となった東日本大震災から6年半。その間にも震災や水害などが起こり、大切な命が失われた。災害はいつ、どこででも起こり得る。いつか来る「その日」のために、1人でも多くの命を救おうと動く人たちがいる。各地での防災・減災の取り組みを追った。

     「私は今、皆さんに種を渡しました。大切な人と自分たちが住む場所での災害について話し合って、種を育ててください」。津波で母と祖母を亡くし、宮城県石巻市雄勝町で語り部を続ける佐藤麻紀さん(45)は被災地を訪れた大学生に呼びかけた。震災翌年に始めた語り部は、これまでに全国で約200回に上る。地震後、母と祖母がいる病院に行くか、子供たちがいる学校に行くか迷った。津波が起きた時どうするか、家族や地域で話し合っておく必要性を痛感した。「自分をさらけ出さないと、聞いている人に気持ちを寄せてもらえない」と、佐藤さんは涙を流し、はなをすすりながらも雄勝弁で語る。「あの日」に戻る語り部はつらいが、「命を守るための相談の種をまきたい」


     三重県の大学生、尾野涼風(りょうか)さん(20)は「(話を聞くのは)今回で3回目。自分に置きかえて、大切な人を考えながら聞いた」と涙を流した=宮城県石巻市雄勝町で2017年8月13日、ともに小川昌宏撮影


     東京電力福島第1原発事故当日、福島県富岡町の一部の住民たちが1次避難した施設に、食べかけのまま残され、保存された食品類。同町は今年3月、震災と原発事故の複合災害による痕跡や被災物、景観などを「震災遺産」として保全、活用する条例を制定した。作業に関わる町教委の三瓶秀文主任学芸員(38)は「町がどう被災し、人がどう動いたのか、当時の様子を記録にとどめ、教訓を伝えたい」=同町文化交流センターで8月17日、手塚耕一郎撮影


     津波の爪痕が今も残る宮城県東松島市の大曲浜漁港で写真を撮る高校3年の中村綾杜(りょうと)さん(17)。同市内の自宅も津波に襲われたが、被災直後の街並みを「忘れないように」とカメラに収め、その年に任意団体「写真で伝える被災地」を設立。変わりゆく古里を記録し続けてきた。「時がたてば地震を知らない世代が増えていく。写真を通じて防災意識を高め、災害の犠牲者を一人でも減らせるよう情報発信を続けていきたい」=2017年9月3日、喜屋武真之介撮影


     被災した岩手県宮古市立田老一中を訪れて交流し、津波で破壊された「田老の防潮堤」を見学する同県八幡平市立西根一中の生徒たち。初めて被災地を訪れた生徒も多く、地元の語り部の話に静かに耳を傾けていた。西根一中の中村百花(ももか)さん(13)は、「震災は思っていたよりも残酷だと感じた」=岩手県宮古市で7月4日、手塚耕一郎撮影


     拡張現実(AR)技術を利用したスマートフォンのアプリを使い、教室が津波に襲われる状況を体感する愛知県西尾市立白浜小の児童ら。愛知工科大の板宮朋基准教授らが開発し、防災教育などにも最適だと注目を集める。海岸近くにあり、南海トラフ巨大地震などによる津波の浸水域に想定される同小の授業では、ゴーグルをつけた児童が「がれきが流れてきた」と声を上げていた。板宮准教授は「(浸水した映像が)自分が知っている場所だと説得力が増す。全国に広めたい」と話す=2017年7月7日、小川昌宏撮影


     「防災の日」に合わせて流通大手イオンは、店舗など全国約2400拠点で防災訓練を実施。従業員や買い物客が、指定された日時にそれぞれの場所で身の安全を守る「シェイクアウト訓練」に参加した。食品売り場でしゃがみ、頭を守るため買い物かごをかぶっていた。イオンはグループ全体で防災訓練を年に計6回行う=千葉市美浜区で2017年9月1日、小川昌宏撮影


     高くそびえる13メートルの津波避難タワー(中央)。鉄骨造りで、周囲に漂流物から守るためのくいが並んでいる。静岡県内では、東日本大震災のあった2011年3月の末まで7棟だった避難タワーが、今年4月1日までに108棟建設されている=静岡県御前崎市で2017年8月日、小川昌宏撮影


     フィールドワークとしてタブレットを活用しながら野々島の地層を調べる多賀城高校災害科学科の生徒たち。将来的に生徒たちが仕事として防災対策や被災地の復興などに携わる上で、その土地の成り立ちや歴史、文化を知る重要性について学ぶことが狙いという。同科では高校3年間のカリキュラムで、防災や減災に関わる授業が全体の約4分の1を占めている=宮城県塩釜市の同島で2017年7月14日、喜屋武真之介撮影


     住宅街の中にある「練馬区立防災学習センター」。小学校の校舎を利用して14年に設置された。地域密着型の防災を学べる同センターは毎年、夏休み中の子供たちを集めて避難体験などができる講座を開く。体育館に毛布を並べ、床の硬さや隣人との近さを体感する。同区の小4、竹沢仁志さん(10)は「子供でもギリギリ寝転べるくらい。大人なら窮屈だろうな」。地域の防災が学べる同センターは注目度を増し、昨年度は約6000人が来場、職員が出張する出前講座は1万2000人を超える区民らが参加した=東京都練馬区で2017年8月23日、小川昌宏撮影


     六本木ヒルズで行われた総合震災訓練。火災時煙体験で、濃い煙の充満したテントを出る森ビル社員。新入社員で今年初参加の池野谷輝さん(22)は、「継続的に訓練を重ねないと何もできないと感じた。これからも積極的に参加したい」と話した=東京都港区で2017年9月1日、手塚耕一郎撮影


     「GINZA SIX」の地下にある防災備蓄倉庫。帰宅困難者3000人を3日間受け入れる事を想定し、食料27000食や水27000リットル、簡易トイレ45000回分、ブランケット、エアマットなどを保管している=東京都中央区で2017年8月25日、手塚耕一郎撮影