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余録

江戸時代、大名家はよく屋敷内の稲荷などを一般公開し…

 江戸時代、大名家はよく屋敷内の稲荷(いなり)などを一般公開し、さい銭やお札の販売で台所をうるおした。「情けありまの水天宮(すいてんぐう)」は有馬(ありま)家が国元の水天宮を三田の上屋敷に勧(かん)請(じょう)して大評判となった時の地口(じぐち)である▲当時、不祥事で信用を失っていた有馬家は年に千何百両の収入を得て、イメージ回復もなしとげた。もしや「情けありま……」も有馬家が仕込んだのではないかと思わせる成り行きである(鈴木浩三(すずき・こうぞう)著「江戸の風評被害」筑摩選書)▲こうなれば怪しげな仏像を黄金不動と名づけ、縁起を捏造(ねつぞう)して開帳する大名家も現れる。出入り業者を使って御利益や評判が広がるように仕組み、人集めは成功した。だが虚説をとがめる寺社奉行の手入れを受けて開帳は頓挫(とんざ)する▲今も仕込んだサクラによる評判作りに余念のない人々はいる。先日はネット広告関連会社の社員が一般人を装ってダイエット報告をネット投稿し、見た人を自社のサイトに誘導していたステルスマーケティング(ステマ)が発覚した▲使われていたのは写真共有アプリ「インスタグラム」で、今やそこで多数のフォロワーをもつ人のライフスタイルやファッションへの影響力は絶大である。いわばステマの格好の舞台で、広告なのを隠した勧誘は他にも潜んでいよう▲米国で架空の映画評論家の絶賛批評で客集めをしたステマでは、映画会社がファンに1人5ドルの賠償金を払った。いちいち訴訟をせずとも、ここはステマを見合わぬものにする仕組みがほしいところである。

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