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社説

徘徊対策で市が保険契約 全国の自治体でも検討を

 人口23万人の神奈川県大和市が、注目すべき認知症の対策に取り組んでいる。

     認知症の高齢者が徘徊(はいかい)中に事故を起こし、家族が高額の損害賠償を求められた場合に備え、市が掛け金を全額負担して保険に加入する。

     保険の仕組みはこうだ。

     認知症による徘徊の可能性がある人は、市の「はいかい高齢者等SOSネットワーク」に登録される。

     登録者が徘徊して事故などで第三者に損害を負わせた場合、3億円を上限に賠償される。本人の死亡・傷害に対する保険金も給付される。登録者は市内に約280人いる。

     きっかけは、徘徊して線路内に入り事故に遭った認知症高齢者の家族が、鉄道会社から高額の賠償を求められ、社会問題化したことだった。

     愛知県内の認知症男性をめぐる事故で、最高裁は昨年3月、家族の監督責任を限定的にとらえJR東海の訴えを退けた。ただし、監督責任は同居の状況などによって異なる。

     大和市は、東京都や横浜市への通勤圏にあり、私鉄3社が乗り入れている。八つの駅と32カ所の踏切があり、市の面積の割に多い。認知症の高齢者と同居する市民からは不安の声が寄せられていた。

     道路などで他人にしがみつき転倒させ、けがをさせた場合なども保険の対象になる。

     初年度の見込み保険料約323万円を補正予算案に盛り込み、今月末に市議会で可決される見通しだ。市は11月にも制度をスタートさせる。

     認知症対策は喫緊の社会的課題である。認知症の高齢者は約500万人とみられている。警察庁によると、このうち徘徊して行方不明になる人が毎年1万人を超える。行方不明の手前で見つけられる人はさらに多いだろう。だが、家族が四六時中見守ることは難しい。

     民間保険を活用した大和市の取り組みは、認知症の高齢者を介護する家族の負担の軽減に役立つはずだ。徘徊する認知症高齢者による事故リスクを地域社会で分担する議論につなげていきたい。

     大和市には、他の自治体からの問い合わせが相次いでいる。都市部などでは同様の対策の必要性が特に高いのではないか。全国の自治体で検討を進めるべきだろう。

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