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余録

映画監督の関口祐加さんは…

 映画監督の関口祐加(せきぐち・ゆか)さんは認知症の母との日常をユーモラスに描いた映画「毎日がアルツハイマー」で知られる。認知症予防財団の広報誌にコラムを寄せていた。母が何年も使っていないガス台の火を付け、ぼやを起こしたという▲お茶を飲もうとしたのならいつものようにレンジで温め直したはずだ。関口さんは「探偵」になる。翌日、原因を突き止めた。レンジのコンセントが抜けていて使えなかったのだ。認知症のせいにしてしまえば分からなかった。母には母の理由がある▲この人も探偵なのかもしれない。大学准教授から介護士になった六車由実(むぐるま・ゆみ)さんだ。介護現場に民俗学の聞き書きの手法を取り入れた。施設の入所者は記憶が薄れていると思っていたが、思い出深い出来事は表現豊かに語ってくれる。著書「介護民俗学へようこそ!」にある▲料理の話をしないおばあさんがいた。なぜかいなりずしの作り方だけは詳しい。話を聞いていくうちに理由に思い当たる。両親は料亭を営み、商売繁盛を祈願してお稲荷(いなり)さんにいなりずしを供えた。それを近所にも配るのが子供の役目だったという▲そんな暮らしは戦争で途絶える。六車さんはこう感じた。「いなりずしは子供のころの幸せの象徴だったのかもしれない」▲関口さんはコラムの中で、イギリスのある精神科医の言葉を紹介している。「認知症という病気だけが同じで、後は十人十色」。長い歳月を重ねた人に、私たちは一人の人間として接しているだろうか。きょうは敬老の日。

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