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用語変更で差別は解消されるか?=粥川準二(科学ライター)

 今月、日本遺伝学会が、長らく使われてきた遺伝学用語である「優性」と「劣性」を、それぞれ「顕性」と「潜性」とに改めることが明らかになった。優性とは、生物における遺伝において、メンデルの法則に従って現れやすい性質のこと。劣性とは、現れにくい性質のことである。差別的なニュアンスを醸しやすい言葉だ。

     昔、知ったかぶりの人が「耳の中が湿っている人は優れている。なぜなら耳の中を湿らせる遺伝子は“優性遺伝子”だからだ」と説明するのを聞いたことがあるが、優性遺伝子は劣性遺伝子に対して優れているわけではない。こうした誤解が減るならば、この変更は歓迎だ。また、生物を少し勉強した学生は「優生思想」を「優性思想」とよく書き間違えるので、やはり今回の変更は望ましい。

     一方、日本医学会が「奇形」を、「形態異常」などに変更することを検討中だとも伝えられている。奇形とは、発生の過程で生じた形態の異常のこと。筆者も「先天異常」や「先天障害」と言い換えてきたが、正確さには自信がない。そもそも「異常」や「障害」もある種の価値判断を含む言葉であり、注意したほうがいい。たとえばダウン症の原因は「染色体異常」ではなく「染色体異数性」と呼ぶべきかもしれない。「障害」を「障碍(がい)」や「障がい」と記すべきだとの意見もある。

     その一方で、言葉を変更しても差別が解消されるわけではない、という指摘もあり、説得力を持つ。このことを徹底するならば、「優性」も「奇形」もあえて使い続けるべきかもしれないが、いかがだろうか。


     林英一、金原ひとみ、長有紀枝、吉崎達彦、粥川準二の各氏が交代で執筆、毎週火曜日に掲載します。

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