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社説

クルド人自治区の住民投票 独立への願いは理解する

 中東に住むクルド人は総人口3000万人ともされるのに独立を果たせず、「国を持たぬ最大の民族」と呼ばれてきた。だから、独立の是非を問うため25日にイラク北部のクルド人自治区で実施される住民投票は重要な意味を持つ。

     投票では独立賛成票が圧倒的多数を占めそうで、イラクのほか周辺国のトルコやイラン、シリアなどにもクルド人の独立や自治権拡大を求める機運が高まると見られるからだ。

     クルド自治政府を率いるバルザニ議長は「周辺国との国境線は変更されない」と述べ、あくまでイラクだけの問題としているが、これを文字通り受け止める向きは少ない。

     イラク議会は住民投票に反対する決議を採択し、トルコやイラン、シリアも反対の立場を崩さない。クルド自治政府を支援してきた米国も地域の安定を損なうと懸念を示した。

     クルド人が独立を求めるのは理解できる。第一次大戦後、日本を含む連合国とオスマン帝国が結んだセーブル条約(1920年)はクルド人の独立を認める条項を定めたが、3年後のローザンヌ条約では新生トルコへの配慮もあって取り消された。

     46年にはソ連の支援でクルド人のマハバード共和国がイラン領内に樹立されたものの、1年もしないうちにイラン軍が侵攻して崩壊した。

     以後、クルド人は辛酸をなめ続けた。88年、イラク軍の化学兵器によって5000人ともされるクルド人が死亡したのはその典型だろう。

     他方、クルド自治政府の治安部隊「ペシュメルガ」は、過激派組織「イスラム国」(IS)に対して米軍と共闘している。こうした実績を踏まえて自治政府は、米国も独立に理解を示すと読んでいるようだ。

     だが、自治政府が実効支配する石油都市キルクークの帰属問題も含めて、イラク政府との火種は多い。

     チェコスロバキアの連邦解消やインドネシアからの東ティモール独立のように事が運ぶとは考えにくい。88年に独立を宣言したパレスチナもいまだ独立とは程遠い状況だ。

     国際政治の谷間で苦しんできたクルド人には同情するが、独立を真剣に望むなら拙速であってはなるまい。自治政府は厳しい前例に学びつつイラクや周辺国と辛抱強く、何より平和的に話し合ってほしい。

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