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余録

宮仕えの身の清少納言は…

 宮仕えの身の清少納言(せいしょうなごん)は長く歩くのが苦手だった。稲荷(いなり)に参詣して中腹の中ノ社あたりで苦しくなり、後の人にどんどん追い抜かれるさまが枕草子(まくらのそうし)にある。七度参りをするという中年女の健脚をうらやんだ▲稲荷とは伏見稲荷。今は千本鳥居の朱と山の緑のコントラストを楽しみながらハイキング気分で稲荷山をめぐる外国人観光客でにぎわっている。枕草子と同じように、その体験はブログやツイッターなどで世界中へ日々、伝えられる▲そんな外国人観光客の人気スポット第1位の常連となった伏見稲荷近くの商業地が地価上昇率でも全国第1位になった。訪日客増が続くなか、京都ではホテルの建設ラッシュだけでなく、町家などの宿泊施設への改装も相次いでいる▲今や地価上昇までもたらしたインバウンドブームである。京都では業者に土地や建物を貸す方がもうかるため廃業する商店が増え、街並みも変わりつつあるという。気になったのはこのニュースを伝える同じ日の朝刊の国際面だった▲こちらはバルセロナやベネチアなど欧州の観光地で起きている観光客排斥を伝える記事だ。民泊による住宅不足や物価高騰、客のマナー違反に怒った住民の抗議デモが相次ぎ、観光客誘致を進めてきた国は対策を迫られているという▲「人間の住めないテーマパークになった」とはバルセロナ住民の嘆きという。今ようやく観光立国の扉を開いたばかりの日本だが、この上げ潮を生かすためにも先達(せんだつ)の失敗から学ぶべきを学ばねばならない。

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