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踏み跡にたたずんで

猿染めの沼=小野正嗣 /大分

 僕の小説にはよく猿が出る。

 うん、その自覚はある。

 仏壇に向かって背中を小さく丸めて手を合わせている人がいる。そう思って電気をつけたら、お供え物の桃を盗みに来た猿だった。そんな話を4半世紀前に教えてくれたのは母方の祖母だった(あるいは祖母からそれを聞いた母だったか……)。

 しかし、それは猿ではなくて、猿の姿を借りて妻に会いに来た、終戦の年に海難事故で死んだ夫だった--とは、もちろん祖母は言わなかった

 僕が勝手にそんな情景を思い描いて短篇小説に書き込んだのは、もう20年も前のことだ。

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