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余録

「群集心理」という言葉をよく耳にされよう…

 「群集心理」という言葉をよく耳にされよう。人が群れると表れる非日常的心理で、人はそこで個性や責任感を失い、暗示にかかりやすくなって他人と同化する。感情的で非論理的なのも「群集」の特徴という▲この群集が文明の主役となる予感に人々がおののいた20世紀初め、仏社会学者のタルドは、群れることなくメディアを介し自律的に結びつく「公衆」に注目した。群集とは対照的な公衆の知性や中(ちゅう)庸(よう)に新世紀の文明を託したのである▲「群集は過去の、公衆が未来の社会集団である」とタルドは述べた。だが現実はそうなってはいない。ネットやメディアを介して結びつく人々の間に巻き起こる群集心理に似た現象や行動を目の当たりにせねばならぬ1世紀後である▲昨年度の文化庁の国語世論調査ではネット上での批判の投稿の殺到--「炎上」をめぐる質問もした。それによると、炎上を見たら自分も書き込みや他サイトへの再投稿(拡散)をするという人が、20代では1割を上回ったのである▲数字は「たまにする」「大体する」を合わせたもので、むろんいつもというのではない。それにしても全体では3%に満たないなかでの20代の突出ぶりはどうしたことだろう。世代別で次に高かった10代もその半分以下の割合だった▲「群集は変化しないが、公衆は時代とともに進歩する」。こんなタルドの期待ともうらはらに、群集はテクノロジーとともに進化した。私たちの内なる「群集」を見すえねばならぬ21世紀の文明の難所だ。

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