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余録

「この国の人々が…

 「この国の人々が、こんなに迅速に行動を起こす輝かしい姿をこれまでみたことがなかった」。メキシコで約40年間暮らしたバイオリニストの黒沼ユリ子さんは1985年9月19日のメキシコ大地震で市民の自発的な救援活動に感激したという(「メキシコの輝き」岩波新書)▲32年前と同じ日にメキシコを襲った地震で多数の犠牲者が出た。しかも9月7日の地震で大きな被害が出た直後だ。オフィスビルなどが倒壊した首都メキシコ市の光景には、同じ地震多発国として胸が痛む▲一方でテレビの映像は救援物資をバケツリレーで運ぶ市民の姿も映し出している。連帯意識の健在ぶりにホッとした気持ちにもなる▲85年の大地震では約1万人が死亡し、世界から救援隊が現地入りしたが、日本の存在感は薄かった。黒沼さんは「人間的な温かみ」が伝わらなかったと書いている。国際緊急援助隊が生まれたきっかけの一つがこの大地震だった▲「目に見える支援を」と同年末に設置され、その後、法律も整備された。国内での豊富な経験に裏付けられた援助隊への評価は今や国際的にも定着した。今回もメキシコ政府の要請で現地入りした▲黒沼さんはメキシコの子供たちにバイオリンを教え、両国の友好に尽くした。今は一線を退き、千葉県御宿町に移り住んでいる。江戸初期にメキシコに向かう途中、同町沖で座礁した帆船の乗組員を救って以来の縁と聞けば、太平洋対岸の国が「遠くて近い国」に思えてくる。可能な支援を続けたい。

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