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日本の岐路 首相が冒頭解散を表明 説得力欠く勝手な理屈だ

 これが衆院を解散し、総選挙をするに足る理由なのだろうか。かえって疑問が深まる記者会見だった。

     安倍晋三首相が28日に召集する臨時国会の冒頭で衆院を解散する方針を正式に表明した。8月に内閣を改造しながら、首相の所信表明演説や代表質問を一切行わず、総選挙を迎える異例の解散となる。

     なぜ今、解散なのか。

     首相の説明は、再来年秋に消費税を8%から10%に引き上げる際、増税分の一部を教育無償化に充てるなど使い道を見直すからだという一点に尽きた。税に関する政策変更は国民の信を問うべきだというわけだ。

     消費増税延期を言い出した2014年の衆院選と全く同じである。

     だが、前回の消費増税延期が与野党の争点にならなかったように、使い道の見直しは民進党が既に打ち出している課題だ。解散して信を問うテーマと言うには説得力を欠く。

    「森友」「加計」疑惑隠し

     使途の変更で財政再建は遠のく。首相も20年度に「基礎的財政収支」を黒字化するという政府の目標達成は困難になると認めた。同時に「財政再建の旗は降ろさない」とも語ったが、どう再建するのかは今後検討するという。やはり最初に解散ありきで、そのための理由を探してきたと言わざるを得ない。

     「北朝鮮と少子高齢化という国難突破の解散だ」とも首相は語った。

     しかし、本音は4年後の21年秋まで首相を続け、宿願の憲法改正を実現するための解散なのではなかろうか。むしろ自らを取り巻く現状を突破する解散と言っていい。

     あの低姿勢ぶりは何だったのか。

     首相は先月内閣を改造した際の記者会見で、森友学園や加計学園の問題について「国民に大きな不信を招いた」と頭を下げた。

     ところが臨時国会では質疑に応じないと言う。再び国民の関心が高まるのを恐れたからだろう。疑惑隠しと言われても仕方がない。しかも首相は「選挙は民主主義における最大の論戦の場」と語り、国会など開かなくてもいいと言わんばかりだった。その論理のすり替えに驚く。

     北朝鮮情勢が緊張する中での解散・総選挙となる点に対しては「北朝鮮の脅かしによって(選挙日程が)左右されてはいけない」と述べるだけで、危機を利用している印象さえ受けた。

     「信がなければ大胆な改革も外交も進められない」とも強調した。だが、まず必要なのは加計問題などで招いた不信を丁寧な説明によって解消することだ。選挙で勝ちさえすれば信任を得られるというのは、順番が逆である。

     一方、記者会見では憲法改正に触れることさえなかった。

    「安倍1強」継続が争点

     元々、首相は来年の通常国会で改憲を発議することを衆院選よりも優先して検討していたはずだ。しかし自ら不信を招いた加計問題などにより、与党内でも求心力が低下し、9条改憲には公明党が強く異論を唱え始めた。このため今のままでは発議は難しいと考え、それを打開するために解散に打って出たと思われる。

     小池百合子東京都知事が自ら代表となって結成すると表明した「希望の党」は改憲に前向きと見られる。首相は衆院選で自民党が議席を減らしても、この新党と協力すればいいと考えているのかもしれない。

     ただし小池氏も今回の解散は「大義がない」と批判し、自民党との違いを強調している。首相の狙い通りに進むかどうかは分からない。

     衆院選で自民党が過半数さえ取れば、来秋の自民党総裁選で3選される可能性が高くなるという首相の計算も透けて見える。

     野党が準備不足の今なら勝てると見たのだろう。だが、もちろんこれも有権者次第である。

     首相は従来、選挙では経済をアピールし、勝てば全ての政策が信任されたとばかりに、安全保障関連法など選挙でさして触れなかった法律を数の力で成立させてきた。

     今回も憲法改正よりも、「人づくり革命」や「生産性革命」といったキャッチフレーズを強調していくはずだ。その手法も含めて改めて問われるのは「安倍政治」である。

     首相が再登板してから5年近く。「安倍1強」のおごりやひずみが見えてきた中で、さらに4年続くことの是非が問われる衆院選だ。憲法や安保、経済・財政と社会保障など、さまざまな重要課題をどうしていくのか、日本の大きな岐路となる。

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