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余録

「われらが唯一の友は山々」とは…

 「われらが唯一の友は山々」とはクルド人の古い格言という。中東のクルディスタンと呼ばれる山岳地帯で遊牧生活を送ってきた彼らは勇猛で独立心が旺盛(おうせい)だが、ごく短期間を除き独立国をなしたことがない▲「アラブ人は蠅(はえ)のようだ。追えば追うほどしつこくなる」「神がすべての人をトルコ人の毒牙(どくが)から守りたまわんことを」「ペルシャ軍のよう(に弱い)」--他民族をそしることわざが多いのにも少数民族のなめた辛酸(しんさん)がうかがえる▲ただイラク、トルコ、イランなどの各国では「少数」でも総計は3000万人、「国を持たぬ最大の民族」というクルド人である。そのイラク北部の自治区で行われたのは独立の賛否を問う住民投票だった。結果はおのずと予想できる▲投票を行った自治政府のバルザニ議長は独立派の勝利を宣言して、イラク中央政府に独立交渉の開始を求めた。だがその中央政府は投票を違憲だとして認めず、交渉も拒否、治安部隊の自治区境界への派遣など高圧的な措置で応じた▲地元のテレビは投票結果を喜ぶクルド人の姿を報じたが、トルコなど周辺諸国の敵意にも囲まれた独立の動きである。地域を不安定にすると投票の中止を求めていた米国はじめ国際社会も「悲願」の突出による新たな対立を懸念する▲「千のため息、千の涙、千の反乱、千の希望」。古い詩のうたうクルドの運命という。ため息や涙を希望に変えるのは、国際社会の共感と「時」を味方にする政治的賢慮(けんりょ)だろう。山々のかなたにも友はいる。

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