張り詰めた空気に、駒音が響いた。
9月14日朝、東京・千駄ケ谷の将棋会館「飛燕(ひえん)」の間。7四歩。開始から間もなく、佐藤慎一五段(35)はほとんど前例のない攻めの一手を指した。向かい合うのは藤井聡太四段(15)。史上最年少で棋士になり、29連勝の記録を作った若き天才だ。
藤井四段とは話したこともないが、対局を心待ちにしていた。「相手は必ず良い手を指す。応えられればきっと面白い将棋になる」
お昼の時間が来た。棋士にとって食事は勝負のうちでもある。相手より豪華さや量で上回り心理的に優位に立…
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