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余録

ひんぱんに行われたのは「ペンはずし」だった…

 ひんぱんに行われたのは「ペンはずし」だった。測定器の記録紙に基準を超えるデータが書き込まれそうになると機器のペンを手で持ち上げてしまう「技」だ。もしデータが書き込まれてしまっても策はあった▲都合の悪い記録を切り取って新しい紙をつなぎ、手書きで偽データを書き込んだ。「紙つなぎ」とでもいおうか。お気づきだろうが、今の話ではない。11年前に神戸製鋼所が明らかにした工場のばい煙排出データ改ざんの手口である▲地域住民を裏切るこの所業は実に29年間にわたって続いていた。不正の再発防止を誓ったこの時だが、今回のデータ改ざんも少なくとも10年間は続いていたという。偽装体質は骨がらみといえそうだ▲アルミニウム、銅製品の強度や寸法のデータを改ざんして出荷していたという神戸製鋼所である。今度は製品の品質にかかわる不正で、取引先の求める仕様に合うように検査証明書を書き換えていた。取引先の信頼への裏切りである▲しかも製品は航空宇宙、自動車、鉄道など最も信頼性が求められる産業に供給されている。今のところ安全性の問題は生じていないようだが、素材メーカーの品質偽装は製造業のネットワークに不信の毒をばらまくようなものだろう▲いいかえれば、あらゆる製造業への信頼の一丁目一番地に居を構える素材メーカーだ。「ペンはずし」や「紙つなぎ」にうつつを抜かす体質を一刻も早く何とかしてもらわぬことには、没落の道連れにされかねない日本のものづくりである。

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