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フィギュアGPシリーズ

選手輝かせる振付師の存在とは

 フィギュアスケートの選手のプログラムはほとんどが振付師によってつくられる。いわば、振付師は選手の演技を支える人だ。

     ◆まず曲選び、次に要素の構成、そして独創性もある動きへ

     プログラムづくりは選曲から始まる。演技で使う曲は振付師が選ぶこともあれば、本田真凜(大阪・関大高)が今季のショートプログラム(SP)で使う「ザ・ギビング」のように自ら選ぶこともある。本田は「自分が滑っているのがイメージできて、先生(浜田美栄コーチ)に『このプログラムもつくってみたい』と言った」と話す。

     曲が決まれば振り付けが始まる。まず、ルールで定められた要素をどのように入れるかを考えなければいけない。SPであればジャンプ三つ、スピン三つ、ステップシークエンス(注1)一つ。フリーならジャンプは最大で男子八つ、女子七つ。そしてスピン三つ、ステップシークエンス一つ、コレオシークエンス(注2)一つが必要だ。

     これらを、曲のどの部分に入れるか、リンクのどの場所で行うか、さらに要素のつなぎはどうするかなど、さまざまなことを考えながら構成していく。選手やコーチからジャンプやスピンの順番や、「リンクのこの場所で跳びたい」などの要望が出されることもある。ステップシークエンス、コレオシークエンス、技と技のつなぎなどは独創性のある動きも入れてつくり上げていく。

     ◆表現力の指導も振付師の役目

     振付師は選手にポーズ、目線、表情、手や足の使い方も教えていく。選手は振付師が実演する模範を見て、まねながら覚えていく。三原舞依(シスメックス)は映画「ミッション」の曲を使ったフリーの振付師デービッド・ウィルソンさんから「天使が見えるように滑って」「手で話ができるくらい手で表現して。手の動きの中で強弱をしっかりつけられるように」と助言を受けたと明かす。

    三原舞依のフリーを担当した振付師のデービッド・ウィルソンさん(右)はかつて安藤美姫さんの振り付けも担った=2005年5月、貝塚太一撮影

     振り付けが一通り終わると、選手は練習で滑り込んで自分のものにしようと努力する。しかしジャンプのタイミングが合わなかったり、跳びにくかったり、しっくり来ない部分があることもある。その場合は振付師と相談しながら手直しをする。新たな動きが加わることもある。三原の今季のSP「リベルタンゴ」は春に振り付けを行ったが、夏には新たに上半身の動きなどが加わった。

     ◆選手を輝かせる人気振付師の存在

    浅田真央さんのプログラムの振付師としても知られたローリー・ニコルさん=2014年2月、山本晋撮影

     振付師の中でも、ウィルソンさんやローリー・ニコルさんらは選手の間でも人気が高い。

     カナダ出身で自身は男子のシングルの選手だったウィルソンさんは、ソチ五輪があった2013~14年シーズンの羽生結弦(ANA)のフリー「ロミオとジュリエット」や、金妍児(韓国)のプログラムの多くを振り付けた。選曲の幅が広く、選手の良さを引き出し、流れを途切れさせない演目をつくるのが得意だ。

     米国出身で女子のシングルの選手だったニコルさんは、今年春に引退した浅田真央さんの振付師として有名。ミシェル・クワン(米国)を1995~96年シーズンのフリー「サロメ」で世界選手権女子の初優勝に導いたことで名を上げた。柔らかい動きのプログラムをつくるのが特徴だ。

    羽生の振り付けを手がけるシェイリーン・ボーンさん=福田智沙撮影

     14~15年シーズンから羽生のフリーを手がけるカナダ出身の女性振付師シェイリーン・ボーンさんや、12~13年シーズンから羽生のSPを手がけるカナダ出身の男性振付師ジェフリー・バトルさんも売れっ子。本田のSPを振り付けるロシア出身の女性振付師マリナ・ズエワさんはペアやアイスダンスに名プログラムが多い。

     振付師のほとんどは元スケーターで、アイスダンスの選手だった人が多い。スケートのテクニックや表現力にも優れ、どうすれば魅力的な演技ができるかを分かっているからと言われる。また、ステップでどのようにすれば最高難度のレベル4の評価を得やすいかなど、ルールにも精通していることも重要だ。

     ◆宇野の振り付けはコーチが担当

     振付師ではなくコーチが振り付けをすることもある。宇野昌磨(トヨタ自動車)は樋口美穂子コーチがSP、フリーとも担当している。宇野は「プログラムを自分で決めたこともないし、何かがやりたいというのもないし、他の人に習いたいというのもない」と樋口コーチに全幅の信頼を置く。

     選手は毎シーズン同じ振付師と協働するかといえば、そうとも限らない。新境地を開くために振付師を代えることもあれば、羽生やハビエル・フェルナンデス(スペイン)のように数シーズンにわたって同じ振付師に依頼し、関係性を深めてよりよいプログラムをつくっていくケースもあり、選手によってさまざまだ。【福田智沙】

    (注1)ステップシークエンス=さまざまなステップ(足の踏み替え)やターン(片足での方向転換)などを組み合わせて連続して行うもの。演技の中に必ず入れなければならない

    (注2)コレオシークエンス=足を腰より高い位置に保って滑るスパイラル、両足のつま先を大きく外側へ開きながら滑るスプレッドイーグル、その変形で片方の膝を曲げ他方の足を後ろに引いた姿勢のイナバウアーや、ステップ、ターンなどを組み合わせて連続して行うもの。アイスダンス以外の種目で演技の中に必ず入れなければならない

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