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社説

障害者施設での虐待 行政の調査力が足りない

 宇都宮市の知的障害者施設で入所者の男性が腰の骨を折るなどの重傷を負った事件があり、職員計5人が逮捕された。

     障害者虐待防止法が施行されて5年。各市町村には虐待防止センターが設置され、厚生労働省は各施設に虐待防止委員会を設置して早期発見と通報に努めるよう指導してきた。

     しかし通報義務を果たさず、行政の調査に対し事実を否認して証拠の隠蔽(いんぺい)を図る施設は相変わらず多い。虐待が疑われる施設に毅然(きぜん)と対処するため、自治体の虐待防止センターの調査体制を強化する必要がある。

     宇都宮の事件では、体調不良を訴えた男性が病院に運ばれて一時意識不明の重体になり、東京都内に住む家族から警察に相談があって、初めて虐待が発覚した。

     複数の職員が男性に代わる代わる暴行を加えた疑いがあり、内部調査では職員の目撃証言も得られたという。ところが、証言記録が廃棄されており、栃木県警OBの職員2人が証拠隠滅の疑いで逮捕された。施設内の防犯カメラの映像も消去された疑いがもたれている。

     厚労省は毎年、全都道府県や市町村職員に対する虐待防止研修を実施している。最近は警察との連携の強化を重視している。警察の証拠保全や事情聴取のスキルを虐待調査に取り入れることが必要なためだ。

     宇都宮の施設では職員として採用した県警OBに虐待防止の取り組みや事故対応を任せていた。今回の暴行事件でも内部調査を担当していた。厚労省の方針に沿う形で警察の専門性を取り入れていたわけだが、その県警OBが虐待の証拠隠滅を行っていたとすれば言語道断だ。

     もともと施設内の虐待は、通報があっても虐待と認知される割合が著しく低い。行政の調査能力の低さ、施設とのなれあい体質が背景にある。施設側が通報した職員に損害賠償を求めたり、自治体の調査にクレームを付けたりして抵抗する例も増えている。

     虐待防止センターの職員増や専門的な調査能力の向上は不可欠だ。

     被害者や職員が勇気を出して通報しても、それが生かされなければ無力感が広がるだけだ。障害者を支援する施設での虐待を一掃するよう、国も自治体も全力を尽くすべきだ。

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