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社説

トランプ歴訪と北朝鮮問題 危機の打開は国際協調で

 これほど米大統領の歴訪に熱い視線が集まるのも珍しい。まるで一人の人物の双肩にアジアと世界の運命がかかっているかのようだ。きょうから日本、韓国、中国などの歴訪を開始するトランプ米大統領。北朝鮮危機の打開に向けて、その外交手腕に注目したい。

     グテレス国連事務総長ら多くの人々が懸念するように、北朝鮮情勢は今、核戦争の危機にある。核爆弾とミサイルの開発に突き進む北朝鮮に対し、米国は軍事行動を否定していない。演習目的もあるにせよ3隻の米空母が西太平洋に集まるなど、きな臭い空気が強まっている。

     戦争などあってはならない。だが、偶発的な衝突も含めて、平和な日常が突然暗転しかねない局面にいることは自覚しなければなるまい。

    安易な「融和」の危うさ

     26代の米大統領セオドア・ルーズベルトは「大きなこん棒を持って静かに語る」を外交の要諦とした。これに対しトランプ氏は著書「グレート・アゲイン」の中で「私は利益を守るために大きな声で語ることを恐れたことはない」と書いている。

     「大きなこん棒」(軍事力)に加えて「大きな声」(明確な発言、声高な要求)が大事という考え方だ。

     こうした姿勢が「言葉の戦争」の背景にもあるのだろう。トランプ氏は金正恩朝鮮労働党委員長を「ちびのロケットマン」とあざけり、金委員長はトランプ氏を「おいぼれ」などとののしった。

     これを「幼稚園児のけんか」(ラブロフ露外相)と片付けられないのは、北朝鮮が核爆弾で日本列島を海に沈めると言い、韓国や米国への攻撃も再三、口にしているからだ。トランプ氏にも言い過ぎはあるにせよ、北朝鮮の一連の発言はとうてい正気の沙汰ではない。

     この国にどう対処すべきなのか。

     まず対話で緊張緩和を図れと言う人たちもいる。一定の条件付きで北朝鮮の核兵器と、米国に届かないミサイルの保有を許してもいいと考える元米高官も少なくはない。

     だが、米国さえ安全ならいいという発想では困る。核武装を容認すれば北朝鮮は国際社会の善き一員となり、日本にも友好的な態度を取ると言うのか。逆に、より威嚇的になる危険性を考えるべきである。

     相手の要求を簡単にのめば、さらに理不尽な要求を突き付けてくるかもしれない。これはナチス・ドイツに対する欧州諸国の領土的妥協が裏目に出たミュンヘン協定(1938年)の教訓だ。北朝鮮に対しても安易な「融和政策」は危険である。

     私たちは緊張緩和にも対話にも反対しない。だが、脅威を後世に残さないためには細心の注意が必要だ。

     日本の安全保障にとって北朝鮮の非核化は譲れない。と同時に、日本にも韓国にも甚大な被害をもたらしかねない、米軍の軍事行動は絶対に避けなければならない。

     これらの点を安倍晋三首相は日米首脳会談で念を押し、「米国第一」を掲げるトランプ氏に国際協調主義の大切さを説いてほしい。 ◇米中で冷戦構造終結を

     北朝鮮核問題の背景には東アジアに残る冷戦構造が挙げられる。朝鮮戦争(50~53年)は中国が北朝鮮側を、米軍主体の国連軍が韓国側をそれぞれ支援し、旧ソ連も北朝鮮側に武器供与などを行ったとされる。

     このため中朝関係は「血で固めた友誼(ゆうぎ)」とも言われたが、中国にとって、核開発をやめない北朝鮮を擁護することが有益とは思えない。

     現に中国は北朝鮮への対応を徐々に変えてきたが、この際、北朝鮮危機と冷戦構造を過去のものとする戦略的転換が必要ではないか。

     北朝鮮を見放せと言うのではない。生存のために核が必要だと北朝鮮が言うのなら、北朝鮮が核兵器を廃棄しても共存しうる枠組みを米中が協力してつくる選択肢もある。

     ロシアもこれに協力すれば、休戦状態にある朝鮮戦争の終結にもつながろう。トランプ氏と習近平国家主席の米中首脳会談をその出発点にできれば歴史的な成果になる。

     トランプ氏は北朝鮮政策について「(歴代大統領の)クリントンもブッシュもオバマも失敗した。私は失敗しない」と豪語した。確かに米国の対応は失敗続きの印象が強い。

     北朝鮮対応で成功すれば、国内で支持率低下に悩むトランプ政権にとって大きな得点になろう。だが、功を焦って軍事行動に出れば、取り返しのつかぬ大失敗になりかねないことを自覚すべきである。

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