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おかやまアート事情

高橋秀さん渾身の大壁画=柳生尚志 /岡山

 イタリア・ローマに40年定住、国際的に活躍した美術家、高橋秀さん(87)が倉敷市玉島の沙美海岸に帰って来たのは2004年。帰国後は大学で後進を育成する傍ら、06年には妻の布貼り絵作家、藤田桜さんと私財1億円を拠出して「秀桜基金留学賞」を設立、10年間に30人の若者の海外留学を支援した。

     帰国後の集大成ともいえる渾身(こんしん)の大壁画作品5点が先月10日、1日だけ岡山市北区のデパートで公開された。

     「天」「地」「風」「火」「水」と題された190センチ×198センチ~190センチ×396センチの計5点は熊本県玉名市の蓮華院(れんげいん)誕生寺の多宝塔に飾られる。

     高橋さんの作風は独特。エスキースを大画面に投影、そのフォルムの一つ一つに合った木組みの支持体を作りキャンバスを貼る。曲線のフォルムが接触し、合体して空間が生まれる。円弧状のアールの合体はエロスを感じさせる。「エロスの画家」と呼ばれてきた。

     イタリアから日本を見つめ、帰国後は琳派(りんぱ)を意識し、金箔(きんぱく)、錫箔(すずはく)も多用、エロスから命の根源、生きる力の表現を深めた。

     今回の作品の「宙(天)」は漆黒の太陽に割れ目が走り、朝焼けを告げる。「層(地)」は赤の地層が重なり合い、中央にハート型の玉が育まれる。「炎(火)」は金を背景に炎が乱舞、「靡(び)(風)」は市松模様の土壌に唐草がなびく。

     壁画が飾られる蓮華院誕生寺は平安時代末期の僧、皇円上人の誕生の地。鎌倉時代に浄光寺として建立されたが戦国時代に焼失、廃寺となり昭和初期に再興された。現在は真言律宗、奈良・西大寺の別格本山。この皇円上人は岡山が生んだ鎌倉仏教の祖、法然上人の師である。13歳で美作の地から比叡山に入った法然は学僧として知られた皇円の教えを受け、得度した。

     久米南町には法然生誕の地に誕生寺がある。皇円と法然、同じ誕生寺。不思議な縁を感じる。蓮華院誕生寺の川原英照貫主は新築の多宝塔に高橋さんの壁画が飾られることは「運命の巡り合い」だと話す。

     高橋さんとは倉敷の居酒屋で偶然知り合い、その風貌と人柄に「ただものではない。現代の侍だ」と思った。その後、度々アトリエを訪ね、作品の宇宙的広がりに感銘したという。

     イタリアではキリスト教会の洗礼堂の壁面を手掛けたこともある高橋さん。「縁あって多宝塔内の装飾を手掛けたが、天地風火水は仏教に限ったことではない。つながる命の証しを形にした」と話す。

     1日だけの公開を終えた作品はすぐに現地へ運ばれた。多宝塔の落慶法要は来年5月12日に行われ、内部に飾られた壁画も公開される。(美術ジャーナリスト)

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