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社説 トランプ・習近平会談 非核化への責任を果たせ

 トランプ米大統領が日韓に続く中国訪問で習近平(しゅうきんぺい)国家主席と会談した。焦点だった北朝鮮の核・ミサイル開発阻止に向けた論議では、朝鮮半島の非核化や国連安保理制裁決議の確実な履行に向けた協力などで一致した。

     温度差はあるものの、北朝鮮の核開発が地域の安定への脅威との認識を首脳同士が共有した形であり、北朝鮮は真剣に受け止めるべきだ。米中両国も危機回避に向け、協力を継続していく責任がある。

     トランプ氏は習氏が10月の共産党大会で総書記に再任された後、初めて迎えた外国元首だ。習氏は世界遺産の故宮博物院(紫禁城)を自ら案内して回り、夕食を共にするなど破格のもてなしで、2大国の良好な関係を内外にアピールした。

    危機回避は共通の利益

     世界第1、2位の経済大国である米中の関係は重要だ。しかし、米国優先を主張するトランプ政権の誕生で米国の指導力が揺らぐ一方、新興の経済、軍事大国として頭角を現す中国は国際社会の信頼を勝ち得ていないのが現実だ。

     中国が北朝鮮危機の回避に向け、どれだけ主導的な役割を果たすかは、中国に対する国際的な評価にも関わってくる。中国は2003年から08年まで6カ国協議を主導したが、北朝鮮の核開発を止めることはできなかった。影響力に限界があることは確かだろうが、なお、石油など北朝鮮の命脈を握っている。

     両首脳は過去の失敗を繰り返さないという認識では一致したものの、習氏は独自の制裁強化など新たな方策は示さなかった。トランプ氏は「習氏が努力すれば問題はすぐに解決する」と不満もにじませた。

     トランプ氏は「力による平和の構築」を目指し、軍事行動の可能性も否定していない。一方で北朝鮮が核開発を停止する兆しはない。

     中国は朝鮮半島で戦争や混乱が起きることに強く反対している。ここは米国とも息を合わせながら、危機管理に動く時だろう。危機回避は米中共通の利益になるはずだ。

     習氏は党大会で毛沢東、トウ小平に並ぶともいわれる権力を手にした。互恵を中心とする「新型国際関係」や「人類運命共同体」構築などの外交方針を打ち出しているが、具体的な方向性は見えない。

     南シナ海の人工島建設など海洋進出にみられるような「強国外交」が進められるのではないかという懸念もある。北朝鮮への対応は習外交の行方を占う試金石ともいえる。国際協調に向けた変化を求めたい。

     トランプ氏が「不公正」と指摘してきた米中間の貿易不均衡問題では首脳会談に合わせ、航空機やエネルギー、自動車など2500億ドル(28兆円)もの商談をまとめ、不満解消に努めた。

    理念失うトランプ外交

     しかし、巨額とはいえ一時しのぎの外交的パフォーマンスにすぎない。大国同士なら他国も利益を受けるような共通の貿易ルール作りで協力するのが本来の姿だろう。

     習氏は党大会で今世紀半ばまでに「社会主義現代化強国」を実現するという構想を掲げた。共産党体制を維持しながら米国を上回る超大国になることが目標だ。

     欧米に排外主義や保護主義が台頭し、民主主義体制への信頼が揺らいでいる。短期間に全国的な高速道路や高速鉄道網の整備に成功した中国を発展のモデルと考える途上国も出てきているという。

     中国の発展自体は世界や地域の発展に資する。しかし、人権や民主主義などの価値観を共有できなければ、中国の台頭に対する国際社会の懸念はなかなか解消できまい。

     自国優先のトランプ外交から米国の理念が失われたことは寂しい。7月にはノーベル平和賞を受賞した劉暁波(りゅうぎょうは)氏が「獄死」したが、トランプ氏の口から人権の重要性が語られることはなかった。

     トランプ氏は「中国を非難しない」と語ったが、時には相手の欠点を率直に指摘するのも世界をリードしてきた超大国の役割ではないか。

     安倍晋三首相はトランプ氏と「自由で開かれたインド太平洋戦略」に向けた協力で一致した。ならば、米国が自由などの価値観を説く重要性についても助言すべきだろう。

     一方、日中首脳の関係が米中首脳よりも疎遠なことは日本外交の選択の幅を狭める。ベトナムで予定される日中首脳会談では関係改善の基調を確実なものにしてもらいたい。

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