メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

炎のなかへ

/11 アンディ・タケシの東京大空襲 石田衣良 望月ミネタロウ・画

三月七日(7)

 朝食をたべたばかりなのに、お腹(なか)が空(す)いているのは、なぜなんだろう。まるで空気でもたべたみたいだった。前回ほんとうに腹一杯になったのがいつのことか、もう忘れてしまった。闇で高いお米を奮発したという正月が最後だったかもしれない。もう二カ月以上いつでも空腹を抱えているのだ。

 タケシは一階の和室の端に腰かけて、足にしっかりとゲートルを巻いた。締めが甘いと、だんだんゆるんできてみっともないことになる。ゲートルは国防色の包帯のような布切れである。大人は皆ひざからしたに巻いているし、子どもたちのあいだではあこがれの格好だった。ズボンの裾さばきが楽になるし、いざ空襲というときには火の粉を防いで、ズボンに穴が開くのを防いでもくれる。

 一階はコンクリートのたたきにメリヤスの編み機が並び、今はよっさんが操業前の点検をしていた。あとでこ…

この記事は有料記事です。

残り551文字(全文926文字)

関連記事

毎日新聞のアカウント

話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. LGBT 「生産性なし」自民・杉田議員の寄稿が炎上
  2. 皇室 眞子さま、ブラジルで日系人と交流
  3. 訃報 松本龍さん67歳=元民主党衆院議員、元復興担当相
  4. 共同通信世論調査 政権の豪雨対応「評価せず」62%
  5. 夏の高校野球 準決勝展望 北福岡大会あす、南福岡大会22日 /福岡

編集部のオススメ記事

のマークについて

毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

[PR]