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炎のなかへ

/11 アンディ・タケシの東京大空襲 石田衣良 望月ミネタロウ・画

三月七日(7)

 朝食をたべたばかりなのに、お腹(なか)が空(す)いているのは、なぜなんだろう。まるで空気でもたべたみたいだった。前回ほんとうに腹一杯になったのがいつのことか、もう忘れてしまった。闇で高いお米を奮発したという正月が最後だったかもしれない。もう二カ月以上いつでも空腹を抱えているのだ。

 タケシは一階の和室の端に腰かけて、足にしっかりとゲートルを巻いた。締めが甘いと、だんだんゆるんできてみっともないことになる。ゲートルは国防色の包帯のような布切れである。大人は皆ひざからしたに巻いているし、子どもたちのあいだではあこがれの格好だった。ズボンの裾さばきが楽になるし、いざ空襲というときには火の粉を防いで、ズボンに穴が開くのを防いでもくれる。

 一階はコンクリートのたたきにメリヤスの編み機が並び、今はよっさんが操業前の点検をしていた。あとでこ…

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