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段ちゃんの「知っておきたい!中国のコト」

第7回 母校で見つけた!中国人留学生の仲間たち=段文凝

ジャーナリズムを学びたい 抱き続けたひそかな夢

 人にはそれぞれ思い出の場所があります。今回はそんなお話です。日本に来てからの私にとってもう一つのふるさとのような、特別な場所。それは私の母校、早稲田大学です。

     日本に来る前、私は中国・天津のテレビ局でアナウンサーをしていました。スタジオで原稿を読んだり、番組の司会をしたりする仕事がメインでしたが、局を飛び出し、外でロケや取材をすることもよくありました。その時、さまざまな人と触れ合い、話を聞いたことで、次第にある思いが私の中で膨らんでいきました。いつか原稿を読むだけではなく、自分が出会った人たちの思いや情熱を、自分の言葉で世の中に伝えたい。そんな夢を、ひそかに抱くようになったのです。

     来日して日本語を学び、自分のこれからのことを真剣に考え始めた私は、多くのジャーナリストを輩出し、ジャーナリズムの研究にも定評がある早稲田大学に目標を定めました。正直、私には無理かもしれないとあきらめかけたこともありましたが、語学学校の恩師や、友人の励ましや支えもあり、なんとか入学試験に合格することができました。

     早稲田大学で学んだ3年間、私は改めて日本や中国の社会について冷静で客観的に考えることができました。その経験は、今の自分の生き方の原点になっているといっても過言ではありません。大学には今も、さまざまな志を持つ留学生が中国から入学してきます。いま、学んでいる彼らの目に、日本はどう映っているのか。どんな夢を抱いているのか。後輩たちの今を知りたくて、母校を訪ねました。

     今回時間を作ってインタビューに答えてくれたのは、瀬川至朗(せがわ しろう)早稲田大学政治経済学術院教授の指導の下、同大学院政治学研究科ジャーナリズムコースで学ぶ、修士2年の男子学生、天津出身の黄(ホァン)さんと、修士1年の女子学生、西安出身の米(ミー)さんでした。以下は、お二人と私のやり取りです。

    早稲田大学でジャーナリズムを学んでいる米さん(左)と黄さん(右)

    2人の留学生 日本へ来たきっかけは“アニメ”と“ドラマ”

     ――黄さんは2016年に早稲田大学の大学院に入学されたそうですね。中国にはいつまでいたのですか?

     黄:高校を卒業後、中国の大学には通わず、そのまま日本に留学しに来ました。最初に明治大学に入学し、去年、早稲田大学大学院に進学しました。

     ――どうして日本に来ようと思ったのですか?

     黄:若いうちに外の世界に出てみたかったのです。できれば自分の好きな国に行きたいという思いがありました。日本は子供のころから影響を受けていました。僕の場合は、小学校1年生のときにアニメの“ガンダム”を見て、夢中になりました。

     ――米さんは日本のアニメはお好きですか?

     米:アニメよりはドラマが好きです。俳優の小栗旬さんが特に好きで。それで日本に興味を持ち、日本に来ました。まだ小栗旬さんには会えてないですけど(笑い)。

     ――お二人とも中国にいたときから日本語は学ばれていたんですか?

     黄:あまり勉強はしていなかったです。アニメも中国語の字幕があったので。

     米:私は中学校のときから、外国語学校でしたから日本語を勉強していました。大学でも日本語専門、日本語学科で日本語を勉強しました。

     お二人の話を聞いて、私は今も昔も、日本のソフトパワーの影響力は大きいなあと感じました。私自身も、アニメ“名探偵コナン”や“NANA”が好きで、これらの作品を何度も見て日本語を勉強した経験があるからです。後輩たちに、とても親近感を覚えました。そんな彼らは、いま、日本社会をどう見ているのか。引き続き質問してみました。

    日本ってどんな国? 来てみてわかったオドロキの現実

     ――日本の生活で、ここは中国と違うと思うことはありますか?

     黄:ある日、僕は勘違いして“女性専用車両”に乗ってしまったんです。中国にはそういうものがありませんから。車掌さんに注意されて気がついたんですけど、あのときは相当気まずかったですね……。

     米:そういう面では中国のほうが楽ですね。男性も女性も、自分の性別を意識する機会が日本より多くないと思います。中国では「女の子らしくしなさい」ということを、言われた記憶がありません。でも、日本では女性らしいふるまいを求められることがあります。例えば飲み会のときにも、男女の差を感じることが多いです。

     ――「なんで女性がサラダを取り分けなきゃいけないの」とか?(笑)。

     米:中国では男性のほうが、そういうことを進んでやりますね。

     黄:僕は、いま東京駅のおもちゃ屋さんでアルバイトをしているのですが、こんなことがありました。小さい男の子が、女の子用のおもちゃを触っているときに、親御さんが「それ女の子のだから置きなさい」って言っていたんです。そんな小さいときから親にジェンダーを押し付けられているのは、少しかわいそうですね。まだ子供なのに、大人のルールを押し付けなくてもいいのではないかなと思います。

     ――今ちょっと黄さんからアルバイトの話が出ましたけれども、米さんはどんなアルバイトをされているんですか?

     米:私は百貨店の化粧品の売り場で通訳をやっています。お客さんは中国人のバイヤーさんが多いですね。

     ――アルバイトはお二人とも日本に来てはじめて経験されましたか?

     米:そうですね。中国ではそもそもアルバイトをする習慣がないですね。私は日本人の友達が欲しいというのが一番の理由でした。バイトの友達と行く“飲み会”にあこがれていました。

     黄:僕は、大学1年生のときはマクドナルドでアルバイトもしていました。やはり人と接するアルバイトは楽しいです。多くの日本人と接することでより日本に対する理解も深まるような気がします。

     後輩たちの話を聞いて、次第に今の留学生たちの暮らしぶりが分かり、興味深く思いました。最後に先輩として、ズバリ、この質問もしてみました。

    いま“ジャーナリズム”を学ぶ理由

     ――お二人は今、早稲田大学でジャーナリズムを学んでいますが、なぜこの分野に興味を持ったのですか?

     黄:明治大学の3年生のときに、たまたま福島の震災や原発事故について研究するゼミに入りました。そこでたくさんジャーナリズムのことを学んだので、もっと専門的に学びたいと思い、大学院で早稲田大学に来ました。

     米:私は、写真を撮ったり、ドキュメンタリーをつくったりするのが面白そうだなと思って。将来メディアに関する仕事や、広告の仕事をやってみたいので、ジャーナリズム研究科に入りました。

     黄:ジャーナリズムを学んで、僕は日本と中国のどちらにもある、メディアの偏向報道を問題だと感じました。具体的には、相手の悪い部分を強調するような報道です。でも、中国ではここ何年か日本ブームが巻き起こっていて、日本の製品を買いたいという人をはじめ、観光にいきたいという人が多くなっています。日中関係の改善には、政治家の人たちの努力が必要ですが、一般の人たちの認識や価値観も、同じくらい大事だと思います。その認識や価値観に大きな影響を与えるのが、メディアの報道だと思います。

     ――お二人の将来の夢は何でしょうか?

     黄:あまり遠い将来のことは考えないようにしているんです。考えすぎちゃうとあせっちゃうので。でも、ジャーナリストになるのが夢です。今はまだジャーナリストの仕事はしてないですけど、将来的にジャーナリストになりたいなぁって思います。

     米:私の夢はメーカーの広告に関連する仕事をすることなんですけど、ジャーナリズムを学ぶことで、たくさんの分野に携わって知識をつけることができると思うんです。その知識を身につけた上で、自分の視点を持ち、自分自身の考えを発信することが大切だと思います。

    元留学生の“私”に今できること

     今回母校である早稲田大学を改めて訪れたことで、私は一人ではなく多くの仲間と一緒にいるんだ、という実感を得ることができました。

     私が卒業したのはもう3年前のことです。“ジャーナリズムを学びたい”という夢を果たし、日本という新天地で、私は中国と日本の懸け橋になりたいと、さまざまなことにチャレンジしてきました。そのたびにたくさんの失敗や挫折を繰り返し、壁を乗り越えられずに、自分が一人ぼっちであがいているような気持ちになったこともありました。

     けれども、今回こうして自分の原点ともいえる場所に立ち返り、自分を見つめなおしたことで、私はとても素晴らしいことに気が付きました。キャンパスのそこかしこに、当時私が学んだ教室とは違っても、かつての自分と同じ夢や志を胸に抱き、学んでいる後輩たちがたくさんいました。その時私は、“自分は一人じゃない、この場所に集まったきっかけやタイミングは違っても、彼らと私は、同じ思いや縁で結ばれ、今もつながっている仲間たちなんだ”と、素直に思えたのです。

     私も含め、一人一人の夢も、その夢をかなえるための手段も違うでしょう。けれど、同じ縁と志に結ばれた一人一人が、それぞれの夢に向かって全力で努力し続けることで、その力がいつか一つに合わさり、日本と中国を結ぶ大きな“懸け橋”になっていってほしいと、私は夢見ています。

    母校で後輩たちとパシャリ!彼らのおかげで私も初心を思い出すことができました。

    段文凝

    (だん・ぶんぎょう)中国・天津市出身。2009年5月来日。同年まで天津テレビ局に所属。2011年4月より、NHK教育テレビ『テレビで中国語』にレギュラー出演。(2017年3月卒業)2014年早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース卒業。日中間を行き来し講演活動を行い、「かわいすぎる中国語講師」として幅広い層に人気を得ている。2015年、2016年に毎日新聞夕刊「ひ・と・も・よ・う」で取り上げられた。2017年現在、NHKWORLDのラジオにレギュラー出演。舞台や映画などを中心に女優としても活躍している。

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