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我らが少女A

/104 第3章 38=高村薫 多田和博・挿画監修

 雪子はなおもしばらく夢のなかを行き来する。野川公園の蝉(せみ)の声がどしゃぶりの雨音のようになる夏の午後、中学一年か二年の真弓が白い木綿のアイレットレースのワンピースを着て、居間に立っている。まだ脂肪もついていない腕や足が初々しい。窓の外には、道路に自転車を置いて真弓を迎えにきた上田朱美がいる。この夏から水彩画教室に通いだした子で、Tシャツと短パンという、男の子のような格好だ。ねえ、写生に行くんでしょう? 汚れるからジーンズにしたら? 雪子は娘に言う。ほんとうは友だちの服装とつり合いが取れないことを心配したのだが、真弓は頑として首を縦に振らない。朱美ちゃんとはこれでゆくの! これがいいの! 珍しく強く言い放つと、これから写生ではなく、おとぎの国のお茶会にでも行くような笑顔になって飛び出してゆく。雪子の眼(め)にワンピースの白、耳には玄関ドアが閉まる音と蝉の声の雨…

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