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余録

8年前のイグ・ノーベル数学賞は…

 8年前のイグ・ノーベル数学賞はジンバブエ中央銀行総裁が受賞した。「1セントから100兆ジンバブエドルまでの紙幣を印刷し、非常に大きな数にも対処できるトレーニング法を国民に与えた」のが理由だった▲ゆかいな受賞研究で知られる同賞だが、時にイグノーブル=不名誉な超インフレも対象になる。10兆ジンバブエドル紙幣が賞金となったのは3・5京(けい)ジンバブエドル=1米ドルの交換レートを最後にこの通貨が廃止された一昨年からだった▲何しろ「資金が足りないなら、いくらでも金を発行する」と公言したジンバブエのムガベ大統領だった。1980年の独立以来「植民地解放闘争の英雄」の威光をかさに独裁的な統治を続け、国の経済を破綻(はたん)へと導いたその人である▲今年93歳の高齢を迎えていたそのムガベ大統領がついに辞任に追い込まれた。浪費癖(ろうひへき)で悪名高い夫人を後継者にすえる動きに反発した国軍や与党が一斉に離反し、長年の独裁に飽いていた国民からも歓呼で迎えられた退陣表明だった▲ジンバブエは現地語で「石の家」、世界遺産の壮大な石造建築「大ジンバブエ遺跡」にちなむ。この遺跡が新国家のシンボルなのは、白人支配の時代には現地のアフリカ人が過去に高い都市文明をもっていた史実が隠蔽(いんぺい)されたからだ▲白人支配への怨念(おんねん)に乗じた独裁の時代に幕が下りた。大ジンバブエ遺跡は中東やアジアなど世界との幅広い交易を示す出土品で知られる。解放を喜ぶ市民の目にはすでに開かれた未来が見えているのだろう。

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