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余録

落語の演目「大工調べ」は江戸っ子の…

 落語の演目「大工調べ」は江戸っ子の威勢のいいタンカが聞かせどころだ。大工の与太郎が家賃を滞納した「かた」として、道具箱を意地悪な大家に取り上げられてしまう。そこで棟梁(とうりょう)の政五郎が一肌脱ぐ一席である▲そんな政五郎が聞いたら目をむきそうなのが東京・浅草寺(せんそうじ)門前にある「仲見世(なかみせ)商店街」の家賃問題だ。家主の寺側が家賃を来年から16倍に引き上げる案を商店街の店子(たなこ)に示したことが論議を呼んでいる▲昔ながらの土産物屋などが並ぶ観光名所・仲見世の建物は東京都が所有していたが、今夏に寺が買い取った。値上げ案は、10平方メートルあたり月額1万5000円のいまの家賃を25万円に上げるという▲これまでのさまざまな経緯もあり、仲見世の家賃は確かに周辺の市価よりかなり安かった。それでも16倍案に店子が「商売が続けられるのか」と不安に駆られているのも無理はない。一方、寺側は建物を維持・管理するためにも値上げは必要という理屈だ▲年間3000万人を超す浅草の観光客には、仲見世の独特な風情にひかれた人も多かろう。それが大手チェーン店が並ぶ街に変わってしまっては、浅草全体にとっても決してプラスではあるまい▲「大工調べ」は、町奉行の機転をきかせた裁きで与太郎が救済され、一件落着する。前の大家である東京都は「民民(民間同士)の話」(小池百合子知事)と仲裁に乗り出すつもりはなさそうだ。市場原理と下町情緒の折り合いをつけられるような名案は浮かばぬものだろうか。

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