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「おひとりファースト」の時代へ~ミドルおひとり女子が創る、大独身マーケット

第5回 いくらあれば安心? 彼氏より頼れる新サービスの未来像=マーケティングライター・牛窪恵

 40、50代の自立した独身女性、私は彼女たちを「おひとりウーマン」と呼ぶ。

     前回もふれたとおり、彼女たちの多くは20、30代で「なぜこんな男性と?」と頭を抱えるような「だめんず(駄目な男)」に翻弄(ほんろう)されてきた。

     にもかかわらず、おひとりウーマンの中心は、「恋愛至上主義」の時代に青春を生きた、バブル世代(現40代半ば~50代半ば)。いまなお、「いい男性と結ばれるかも」との期待を抱き、恋愛自体に懲りているとは言えない。

    写真はイメージ=iStock

     現に、40代女性の約4人に1人(23.0%)に彼氏がいて、この割合は30代(26.7%)と大きくは変わらないのだ(2016年 明治安田生活福祉研究所調べ)。

     だが、彼女たちの思いは「もう男には頼らない」。

     自分ももういい大人なんだから、との思いもあるが、リーマン・ショックや東日本大震災などを経て、「いまは男性も、女性をかばう余裕がない」と気づいているからだ。

     では、彼女たちが10年、20年後の「いざというとき」に頼れると感じているのは、何か。まず一つは「家」だ。

     半年以上前から、34人のおひとりウーマンに一人一人、対面で取材してきたが、「なぜそんなことを?!」と驚いた一人が、東京都内の通信会社で働くアキホさん(44歳)。

     15年9月、人気俳優でシンガーソングライターの福山雅治さんが女優・吹石一恵さんとの結婚を発表した際、やけになってなんと、「マンション」を買ってしまったというのだ。それも、福山さんのファンでもないのに!

     福山さんのファンが、心的ショックから「つらい」「会社に行く気力が出ない」などと嘆いた、いわゆる「福山ロス」は、感覚的に理解できた。だがなぜ、ファンでもないアキホさんが、やけ酒ならぬ「やけマンション」買いに走ったのか。

     理由を聞くと、彼女はこう言った。

    「それまで福山さんは、独身生活を謳歌(おうか)してるみたいだった。でも発表を聞いて、『なんだ、あなたも結局は〝そっち側(結婚したい)の人〟だったんだ』って、すごくがっかりしたんです」

     ゆえに「ひとりのメリット」を享受したくて、都内の新築マンション販売の現場に行き、2DK、3500万円のマンションを「即買い」したそうだ。

    「福山ロス」でマンション買い、の根底には

     それにしても、デパートで買い物するぐらいならまだしも、家を衝動買いしてしまうとは……。もっともデータでも、既に40代でひとり暮らしする女性の2割以上(22.2%)が、「持ち家」に住んでいるとのデータもある。

     調査元は、総務省。14年の「全国消費実態調査」で「住宅・土地のための負債保有世帯率」、つまり親等からの譲り受けではなく、自身で住宅ローンを支払っている人(単身世帯)の割合。決して少なくない数値だ。

     なぜおひとりウーマンは、大枚をはたいて、ローンを組んでまでマンションを買うのか。一般の調査や私の取材でも、最も多い回答は、「老後を考えて」。

     以前取材した、(社)女性のための快適住まいづくり研究会代表・小島ひろ美さんは、「家を買うことで『これさえあればなんとかなる』と、前向きな思考に切り替わりやすい」と話していた。

     だからこそ、その家でゆっくりお風呂につかり、暖かい部屋でぐっすり眠れて、心身にもプラスに働く。家を買って輝き始める女性も多い、との見立ても教えてくれた。

    写真はイメージ=iStock

     半面、ローンを背負えば「もし倒れてローンが払えなくなったら?」と、不安にもなりやすい。

     そもそもいまの世の中、老後に向けては不安だらけだ。

     貯金にしても、「いくらあれば安心」とのラインが分かりにくい。17年現在、女性の厚生年金・平均月額は、約10 万2000円だが、1カ月あたりの平均消費支出を見ると、60歳以上の「女性単身世帯(無職)」で約15万円(総務省「家計調査」ほか)。

     つまり年金受給中も、貯金を切り崩したり、生活費を思い切って切り詰めたりしなければ、生活が厳しい。多くの専門家が、「女性は80代まで生きるとして、住居費や医療費を含め2000万円程度は、貯金として最低限必要だ」と話すのも、そのせいだ。

     年金自体もどうなるか分からない。

     現40代前半では「75歳にならないと、年金が受け取れない」との見方もある一方で、日本でも、いまフィンランドなどで試験導入されている「ベーシックインカム(原則、すべての国民に生活に最低限必要な所得を一律に支給する社会政策)」の導入も含めて、検討している最中だ。

     だとすれば、40、50代のおひとりウーマンが、いまから「70、80代でいくらあれば安心」と計算しても、あまり意味がない。

     むしろ重視すべきは、「もし倒れたら」に備える「保険」だろう。

     実はおひとりウーマンへの取材では、34人中6人が、過去に乳がんや子宮頸がん、子宮筋腫、卵巣のう腫など「手術」を伴う重い病にかかっていた。

     彼女たち働く独身女性にとっては、自分の「体」が資本。もしこの先、倒れて働けない期間が生じれば、生活自体が危ぶまれる。

     だからこそ、「彼氏より保険のほうが頼れる」との考えも生まれやすい。

    キーワードは「フレキシビリティー」

     彼女たちが支持していた保険の一つが、楽天生命保険(株)の「スーパー2000」。

     一般に、年齢が上がると掛け金も上がる保険が多いが、同保険は誰でも一定の掛け金(月々2000円)で分かりやすく、40、50代の入院時には1日5000円が、がんになると治療給付金として、同12万~15万円が支払われる、とのこと。

     女性加入者のうち、40、50代が6割を占めるそうだ。

     同・経営企画部の眞利子聖乃さんは、次のように話す。

    「現代は、働いて自分で自分の生活を支える未婚女性や、親を見ながら仕事を続ける女性も多い。そんな中で、生き方や立場が変わったとき、自分に合った保険に切り替えられるフレキシビリティーも忘れずにいたいのです」

     なるほど、「フレキシビリティー」と聞いて、思い出したことがある。

     約10年前、婚活中のアラフォー女性に数多く取材していたときのこと。彼女たちは、決まって次のような言葉を口にした。

    「こうでなきゃ、みたいな固定概念が強い男性はイヤ」「柔軟性のある男性がいい」

     女性の生き方は、40、50代になっても多種多様。だからおひとりウーマンは「頼れる」と感じる商品やサービスにも、自分に合わせてくれる「柔軟性」を求めるのだろう。

    写真はイメージ=iStock

     これと似た意味で、彼女たちがもう一つ、「将来頼れるのでは?」「柔軟に私の異常を察知してくれるのでは?」と考えているのが、「AI(人工知能)」だった。

     前回ご紹介したルンバもそうだが、住まいの分野でも今後、「IoT(Internet of Things=モノのインターネット化)」の家電や家具、情報端末とつながる未来型住宅が増えていくはず。

     そうなれば、オートロックなどセキュリティ関連はもちろん、体の不調や心身の疲れまで、住まいが自動的に感知してくれる時代になるだろう。

     既に、横浜市がNTTドコモなどと共同でスタートさせた「未来の家プロジェクト」は、住まいにIoTやAIを活用。居住者のリラックス度合いや活動量など生活状態を可視化することで、快適な室内環境づくりを検討・推進する試みだ。

     こうした家そのものが、将来はそこに住まうおひとりウーマンの健康や心理状態を察知する「サポーター役」になってくれるはずだ。

     もっとも「至れり尽くせり」のサービスが登場すればするほど、彼女たちは「男要らず」になってしまいそうだが……。

    「おひとりウーマン」消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー(毎日新聞出版・1450円)

    「『おひとりウーマン』消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー」(毎日新聞出版)

     コラムの筆者・牛窪恵さんが40・50代の独身女性や関連企業約40社を半年以上取材し執筆した最新刊「『おひとりウーマン』消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー」が毎日新聞出版から発売されます。「おひとりウーマン」とは、みずから働き、気持ちのうえでも自立した、40、50代の大人の独身女性。「おひとりさまマーケット」「草食系男子」などの流行語を世に広め、数々のテレビ番組のコメンテーター出演でもおなじみの著者が、13年間ウォッチングを続けてきた「おひとりウーマン」の消費志向やライフスタイル、恋愛や結婚願望に深く迫ります。amazonでの購入はこちらからどうぞ。

    牛窪恵

    世代・トレンド評論家。マーケティングライター。インフィニティ代表取締役。同志社大学・創造経済研究センター「ビッグデータ解析研究会」部員。現在、立教大学大学院(MBA)通学中。 オフィシャルブログ:アメーバ公式ブログ「牛窪恵の「気分はバブリ~♪」」(http://ameblo.jp/megumi-ushikubo/
    財務省 財政制度等審議会専門委員、内閣府「経済財政諮問会議」政策コメンテーターほか、官庁関係の要職多数。
    1968年東京生まれ。日大芸術学部 映画学科(脚本)卒業後、大手出版社に入社。フリーライターを経て、2001年4月、マーケティングを中心に行う有限会社インフィニティを設立。
    トレンド、マーケティング関連の著書多数。「おひとりさま(マーケット)」(05年)、「草食系(男子)」(09年)は、新語・流行語大賞に最終ノミネート。テレビコメンテーターとしても活躍中。
    【代表作】
    『男が知らない「おひとりさま」マーケット』(日本経済新聞社)
    『独身王子に聞け!』(日本経済新聞社)
    『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)
    『「バブル女」という日本の資産』(世界文化社)
    『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
    『「男損(だんそん)」の時代』(潮出版社)
    『「おひとりウーマン」消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー』(毎日新聞出版)ほか多数

    毎日新聞のアカウント

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