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木語

ポチョムキン村=坂東賢治

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     実態を隠すための施設を「ポチョムキン村」と呼ぶことがある。18世紀、ロシアの女帝エカテリーナ2世のクリミア地方視察の際、側近のグレゴリー・ポチョムキンが村々を飾り付け、豊かであるように見せかけたというエピソードが由来だ。

     歴史的事実かは議論があるようだが、悪い情報を知られないように表面を取り繕おうとするのはロシアだけではない。視察に訪れる外国人用に模範的な地域を整備するのは旧ソ連や文化大革命時代の中国でよく見られたことだ。

     今の北朝鮮も似たようなものだろう。南北を隔てる軍事境界線や中朝国境地帯では相手側から見える場所に団地や遊園地などが建てられている。この中にも「ポチョムキン村」があるといわれる。

     中国では改革・開放政策以降、外国人用の模範地域は意味をなくしたが、隠蔽(いんぺい)体質は簡単にはなくならない。2011年に浙江省温州市で起きた高速鉄道事故で地元当局が事故車両を土に埋めたのはその例だ。

     責任逃れのため、トップの目から実情を隠すこともある。剛腕と呼ばれた朱鎔基(しゅようき)元首相もだまされた一人だ。1998年に安徽省を視察した際、地元政府が直前に空の倉庫に食糧を運び込み、十分に足りているように見せかけていたことが発覚した。

     汚職や規律違反の摘発を続けてきた習近平(しゅうきんぺい)政権下でも状況は変わってはいない。10月の第19回党大会後、初めて規律違反で摘発された閣僚級幹部の魯〓(ろい)前中央宣伝部副部長も習氏の目をごまかそうとして逆鱗(げきりん)に触れたという。

     新華社出身の魯氏は14年5月、中央インターネット安全・情報化指導小組の弁公室主任に就任し、ネット行政を仕切る立場に立った。同年末には習氏が省書記を務めた浙江省で世界インターネット大会をスタートさせた。

     翌年の第2回大会には習氏が出席して演説した。魯氏は世界各国の人々が会議に参加していると印象づけるため、中国に在住する外国人留学生や外国人駐在員を動員し、会議出席者を装わせたという。

     魯氏には他にも規律違反があったとされるが、習氏を喜ばせようとした過剰な演出がとがめられたのだとすると、同情したくもなる。トップの権力が強いほど、部下が機嫌を損ねないように良い情報だけを伝え、失敗を隠蔽するのが世の常だからだ。

     党大会で「習1強」体制が確立された中国。「ポチョムキン村」を生む体質がむしろ強まっているのではないか。(専門編集委員)

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