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毎日フォーラム・あしたの日本へ

長崎大経済学部教授 須齋正幸さん

須齋正幸さん

大学と官民で「地域の国際化」目指す

 国は観光立国を掲げて、自治体とともに外国人観光客のインバウンド増を目指している。しかし、地方都市では一部を除いて実際には思うように進んでいないところが多いのが現状だ。そのような中で長崎大経済学部教授の須齋正幸さんは3年前に「長崎地域国際化フォーラム」を立ち上げて外国語の指導などのために日本に来た人たちをもっと活用しようという取り組みを進めている。「長崎では何となく進み始めた」という須齋さんに、地方都市の国際化への問題などを聞いた。(聞き手 本誌・宗岡秀樹)

     --「長崎地域国際化フォーラム」はどういうものですか。

     須齋さん 各自治体が文部科学省や外務省などの協力でやっている、語学指導の外国青年を招く「JETプログラム」で日本に来た人たちが、2~3年の任期を終えた後そのまま帰ってしまうのはもったいない。この人たちを生かし、それぞれの地域で活躍してもらって国際化につながるようなプログラムを作ろう、という目的で2014年に設立しました。長崎大経済学部と学部同窓会の「瓊(けい)林会」の共催で、経済同友会に後援してもらっています。

     第1回は県と市の国際化から地域の国際化の現状をテーマに、長崎で比較的大きな企業である協和機電工業の会長に地元企業の国際化について話していただき、東京からも農林水産省や全日空の人などに来てもらって東京から見た長崎のポテンシャルなどについて話してもらいました。

     --立ち上げた動機は。

     須齋さん 長崎は昔は国際都市でしたが、最近は地方都市で国際化を目指してもなかなか難しいのが現状です。たまたま13年に設置された文科省の「戦略的な留学生交流の推進に関する検討会」で、双日総合研究所相談役で経済同友会米州委員会委員長の多田幸雄さんと一緒になり、JETの人たちを活用できないか、という話が出たのです。多田さんは、経済同友会の知日派・親日派拡大PTの委員長をしており、日本の味方になってくれる外国の人を作るのが大切だと考えて、経済界としてできることはないか、ということでした。

     JETのプログラムには、学校で外国語を教える助手(ALT)、県庁や市役所などで、地域のホームページの外国語化など文化交流の手伝いをする国際交流員(CIR)、スポーツ国際交流員(SEA)があります。長崎大は文科省のGGJ(グローバル人材育成推進事業)に採択されるなどグローバルな人材を活用しようというプログラムを持っていました。向いている方向が同じだったので、大学と官と民の協働で「地域の国際化」をやっていこうというアイデアが出てスタートしました。

     --JETの人や留学生で日本に残る人は少ないのですか。

     須齋さん ALTなどの人には日本の国費で1カ月に20万円から30万円払っています。しかし、日本が好きになって日本に残りたいと思っても、地方では若い人にそれだけの給料を出せる企業はないでしょう。私が加わった文科省の会議で、留学生にも国内のインターンシップを広げたいという議論もあったのですが、留学生にその機会を与えてくれる日本の企業は多くはありません。

     --フォーラムをやった成果は。

     須齋さん 昨年、長崎市内の高校のALTをやっていたイギリス人女性を「瓊林会」が雇用してくれて、派遣という形で地元のホテルでの仕事や、出島で観光ボランティアガイドのための英語の入門という教室を開くなどしています。やっと直接地域に残る人が1人出たのです。長崎ではあと1社がJETの人を雇いたいという企業が出て、なんとなく進み始めたと思っています。

     --さらに日本に残る人を増やすためには。

     須齋さん 1社で抱えられなければ、数社で協力して雇うような枠組みができるというのは十分あると思います。JETの外国人が残って、地域の人たちとの連携が広がれば、生きた英語も身に着き、外国人観光客と英語で会話できるようになるといい。国際化というのは普通の人が自然にコミュニケーションすることだと思うのです。私は、外国語を勉強してある程度できるようになったら「外国語を話せます」というようなバッジを作るよう提案しています。外国人観光客がそのバッジをつけている人を見て「食べるところはないですか」などと尋ねると思うのです。長崎の人ってすごく親切でやさしい人が多いので、そういう雰囲気が町全体に広がっていくのが長崎の目指す国際化ではないかと思います。

     --JETで地域の国際化をつなげようという試みは少ないのですか。

     須齋さん 同友会のアンケートではALTを知っていてもJETプログラムの認知度は非常に低い。皆さんに知ってもらうことが大切です。そうした中で国際化のプログラムを進めるには大学が絡んでいくのがいいと思います。県庁とか市役所は縦割りで地域の活性化と国際化の担当が別なのでそれが仕事でないと動けない。国際化フォーラムをやった時も国際化の担当者が来ると地域振興の担当者は来ません。横の連携と言ってもなかなか難しいです。その点、大学はどちらにも行けて、ハブになる立場になれると感じています。組織や分野の横断的なプログラムは、自治体のトップがリーダーシップを発揮してやるか、私たちのような大学が間に入っていろんな人に声をかけて集めてやるかだと思います。

     --JETでセーシェルの人が初めて長崎に来たそうですね。

     須齋さん イギリスの大学を卒業し、シンガポールで修士課程を修了している女性がALTとして今年8月に五島市の旧奈留町に来ました。五島市教育委員会の採用で、小中学校だけでなく高校でも教えてうまくやっているようです。日本語を全く話せなかったのですが、結構工夫してダンスとかゲームをやってボディーランゲージで伝わり、だんだん会話もできるようになり、子どもたちの人気者になって地元にも溶け込んでいます。

     セーシェルはリゾート地として人気になりましたが、日本の大使館もないし、今は新婚旅行でもあまり行かなくなったようです。日本とセーシェルの関係をうまくやってくれるところはないかという相談が多田さん経由で私の所に来て、何かしようという話が別の所で動いていたのです。

     セーシェル、長崎とも島が多く、主産業が水産と観光で共通点も多いのです。ただ、いきなり地域間交流というわけにはいかないのでまず、セーシェル大と長崎大間で交流することにしたのです。安倍晋三首相が初めてケニアに行った昨年8月の第6回アフリカ開発会議の席上で大学間の調印をし、それでセーシェルからJETで長崎に来てほしい、ということになり実現しました。

     すさい・まさゆき 1961年生まれ。85年早稲田大商学部卒、93年早稲田大大学院商学研究科博士前後期課程単位取得満期退学。長崎大経済学部講師、助教授を経て2001年4月から現職。その間06~14年副学長、08~13年国際担当理事を兼務。16年の文部科学省「海外留学に関する危機管理ガイドラインに関する検討会」主査なども務めた。

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