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木語

北京「下流」の反発=坂東賢治

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     先月来、中国でにわかに流行語になったのが「低端(低レベル)人口」だ。日本語にはないが、低端はローエンド、高端がハイエンドの意味で使われる。「低端人口」は出稼ぎ者ら底辺層のことだ。

     6日の朝刊で北京特派員が詳しく報じていたが、11月中旬に19人が死亡した北京市の雑居ビル火災が契機だ。北京市はビル所有者らを検挙すると共に全市で安全検査や危険な建物の閉鎖を進めた。

     その際に混乱が起きた。違法建築とされた住居から寒空の下に追い出される住民が相次いだのだ。中国の政府職員の人権意識は高くはない。電気や水道を止めるなど荒っぽい手法も使われた。

     安価な住居を選択せざるを得ない人々の多くは地方出身者だ。当局の発表では2万5000件以上の違法建築が摘発された。少なくとも数万人が家を失ったとみられ、「低端人口」の意図的な追い出しという批判が広がった。

     習近平(しゅうきんぺい)政権は北京の人口抑制のため、首都機能を政治、文化、国際交流、科学技術の4分野に特化させ、将来的に生産性の低い「低端産業」を市外に移転させる方針を打ち出している。

     北京からいずれ追い出されるのではないか。出稼ぎ者にはそうした不安感も高まっていた。火事を契機にした北京市当局の違法建築取り締まりで、政府への不信感が一気に噴き出たのだろう。

     北京市は「住民の安全を確保するためで追い出しではない」「低端人口という言い方はしない」と火消しに懸命だ。トップの蔡奇(さいき)党委書記(62)も視察で地方出身者に「あなたたちが必要だ」と声をかけ、苦労をねぎらった。

     蔡氏は習国家主席のかつての部下だ。10月の党大会で異例の特進で政治局入りした注目株だが、香港紙によれば、トランプ米大統領の訪中時の火災で習氏から叱責されていたといわれる。

     2度目の大火に焦った蔡氏が影響を十分に吟味せずに安全確保を厳命し、消防当局などが後先考えずに強引な取り締まりに動いた。このあたりが真相に近いのではないか。

     批判の高まりで建物の閉鎖にはブレーキがかかったという。中国では朝令暮改はよくあることだ。誤りと思えば、改めるのが筋だろう。

     しかし、指導者の思惑で生活が大きく左右されては庶民はたまらない。習氏は「よりすばらしい生活」を目指し、「統治能力の現代化」を目標に掲げる。しかし、首都の混乱ぶりを見ると、その実現は容易ではないようだ。(専門編集委員)

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