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社説

米がエルサレムは「首都」 対立あおる危険な決定だ

 危険な決定と言うよりない。アラブ・イスラエルの歴史的対立の火にみすみす油を注ぐような道をなぜ選ぶのか。そして、なぜ今なのか。

     米政府は5日、トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定し、今はテルアビブにある米大使館のエルサレム移転を決めたことを明らかにした。大統領自身が表明する予定だ。

     東エルサレムを首都として国家樹立を目指すパレスチナ自治政府をはじめ、アラブ各国は猛反発している。これに便乗したテロが各地で起きることも懸念される状況だ。

     3宗教(ユダヤ、キリスト、イスラム)の聖地があるエルサレムは1947年の国連総会パレスチナ分割決議で「国際管理地」とされた。

     80年代にイスラエルがエルサレムを「不可分の首都」とした時も、国連安保理はその宣言を無効として撤回を求める決議を採択している。

     さらに、90年代から米国を主な仲介役として始まった中東和平交渉では、エルサレムの最終的地位を当事者の協議によって決めることになっていた。トランプ政権の決定は大きな方針転換であり、中東和平プロセスを崩壊に導く恐れもある。

     米議会は95年、大使館移転を求める法を制定したが、歴代政権は執行を延期してきた。それは、同盟国イスラエルへの配慮と米国の国際的な責任を両立させる知恵とも言えた。

     今、米国が努めるべきなのは和平交渉再開に向けた仲介であり、国際社会が支持する「2国家共存」の枠組みを崩すことではないはずだ。

     エルサレムへの大使館移転はどう見ても筋が通らない。米国への追随も危険だ。中東和平を支援する日本が、現時点で大使館移転は考えていないと表明した点は評価したい。

     米国の決定の背景にはトランプ氏の娘婿でユダヤ教徒のジャレッド・クシュナー氏(大統領上級顧問)の影響が指摘される。ロシアとの癒着疑惑「ロシアゲート」に関する同氏への追及の矛先を鈍らせ、親イスラエルの傾向が強い保守層の歓心を買って政権の人気回復を図る。トランプ氏のそんな思惑も感じられる。

     だが、聖地を政治の道具にしてはならない。紛争の地・中東に新たな火種を投じるのは、米国に不利益をもたらすだけである。

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