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余録

願いをかなえるランプの魔人ジョークの一例である…

 願いをかなえるランプの魔人ジョークの一例である。ある人がランプを拾ったら魔人が現れたので、「月に行きたいからハシゴをかけて」と頼んだ。だが「ワハハ、いくらワシでもそんなむちゃはできんよ」▲では地上の話ならばと「パレスチナとイスラエルの和平を実現してほしい」と頼むと、魔人は「エッ、えーと前の願いは何でしたっけ」。千夜一夜物語の魔法もとうてい通用しない中東和平だ。そこに火を放つかのような演説である▲トランプ米大統領はエルサレムをイスラエルの首都と認め、米大使館を移転する方針を表明した。和平仲介への関与は続けるとしたものの、仲介役の一方的な態度表明への激しい反発はパレスチナだけでなく中東全域に広がっている▲大統領の願いはただ一つ、ロシア疑惑で揺らぐ政権の浮揚へむけた国内の支持基盤固めらしい。だが魔人は警告しなかったのか。それが中東の安定を破壊して、テロを挑発し、米国民の生命も脅かす制御不能(せいぎょふのう)の混乱を呼び込む恐れを▲わが子すら神の犠牲にしようとした聖書の預言者アブラハムを崇敬するユダヤ教、キリスト教、イスラム教は「アブラハムの宗教」と呼ばれる。その三つの信仰がともに聖地とするエルサレムを政治対立に巻き込む浅慮が空恐(そらおそ)ろしい▲物事のリスクの計算すらできない五里霧中(ごりむちゅう)を「不確実性」というが、まさに中東、いや世界に不確実性の霧をまき散らしたトランプ演説だ。人のいい魔人には手に負えない呪文「米国ファースト」の魔力である。

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