メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

大山古墳(中央奥)などから構成される百舌鳥古墳群=堺市堺区で2017年7月30日、本社ヘリから三浦博之撮影

 文化財、論壇、文芸の各担当記者が関西を中心に2017年を振り返った。各ジャンルを横断する話題として、日本史を違った側面から分析する新書が大ヒットしたことが特筆される。

     ◆文化財

    「世界の記憶」朝鮮通信使に光

     2017年は、日本の歴史・文化遺産に世界的なスポットが当たった年でもあった。江戸時代の外交資料「朝鮮通信使に関する記録」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」(世界記憶遺産)に登録、大阪府の「百舌鳥(  もず  )・古市(ふるいち)古墳群」(堺市、羽曳野市、藤井寺市)は、2019年の世界文化遺産登録に向けて動き出した。

     朝鮮通信使は1607年から1811年の間に計12回、日本を訪れた朝鮮の外交使節団で、豊臣秀吉の朝鮮出兵で損なわれた両国の関係修復に大きく貢献した。行列の様子を記した絵図などが関西にも多く残されており、歴史認識を巡る意見の相違もある中で「相互理解の精神」を受け継いだ日韓の民間団体が共同で申請していた。

     百舌鳥・古市古墳群は、日本最大の前方後円墳・大山(だいせん)古墳(仁徳陵古墳)をはじめ、歴代天皇や皇后の墓とされる古墳を含む4世紀後半~6世紀前半の89基が現存。このうち、比較的保存状態の良い4世紀後半~5世紀後半の49基が登録候補となっている。

     今年7月の国の文化審議会で国内推薦が決まったが、審議会は同時に取り下げの可能性にも言及。背景には、年々厳格化する審査で、日本側とユネスコ側の価値観がうまく一致するかといった懸念がある。また、現在作成中で来年2月までに提出する正式な登録推薦書の書きぶりが成否の鍵を握る。来夏には、ユネスコの諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)が現地調査に訪れる予定だ。【林由紀子】

     ◆文芸

    今村夏子さん芥川賞候補に

     関西の文学界で特筆する事案はなかったが、関西を拠点にする新進・気鋭の作家の堅実な歩みに明日への明るい兆しを感じさせた。

     今夏の芥川賞候補に今村夏子さん(37)の『星の子』が選ばれた。惜しくも逃したが同作で野間文芸新人賞を射止めた。直木賞候補には木下昌輝さん(43)の『敵の名は、宮本武蔵』が挙がった。同作は山本周五郎賞候補、山田風太郎賞候補にもなるなど時代小説の新たな書き手として期待されている。人気作家、津村記久子さん(39)は『浮遊霊ブラジル』で紫式部文学賞を、朝井まかてさん(58)は『福袋』で舟橋聖一文学賞を受賞した。

     『足立さんの古い革鞄』で織田作之助賞を受賞した随筆家、庄野至さんが10月、88歳で死去。11月、『開高健書誌』『田辺聖子書誌』などを駆使して精細な書誌を多数ものした書誌学者で関西大名誉教授、浦西和彦さんが76歳で亡くなった。【有本忠浩】

     ◆論壇

    新書『応仁の乱』ベストセラー 節目迎えた日文研・みんぱく

    国立民族学博物館の開館40周年記念写真展=大阪府吹田市で2017年11月8日、小松雄介撮影

     国際日本文化研究センター(京都市西京区、日文研)と国立民族学博物館(大阪府吹田市、みんぱく)が節目を迎えた。

    多くの人が集まった国際日本文化研究センターの創立30周年記念講演会=京都市西京区で2017年5月17日、小松雄介撮

     創立30周年の日文研は5月に記念式典を行った。初代所長で哲学者の梅原猛さんが登壇し、対立が深まる国際情勢などを踏まえ、他者との共存を呼びかけた。

     みんぱくは11月に開館40周年記念式典を行った。それに先駆けて、3月には10年の歳月を費やした常設展示の全面改修が完了。そのほか、世界のビーズを集めて紹介した特別展「ビーズ-つなぐ・かざる・みせる」など記念の展示や行事が1年を通じて開かれた。

            ◇

     関連書籍の出版やテレビ番組での特集など、「日本史ブーム」は今年も続いた。それを象徴するように、日文研助教の呉座勇一さん(37)が刊行した『応仁の乱--戦国時代を生んだ大乱』(中公新書)が大ベストセラーになった。

     応仁の乱は室町時代後期の1467年に起こり、諸大名が東西に分かれて11年も続いた大乱だ。主戦場となった京の都の大半を焼き尽くしたとも言われているが、その成り立ちや背景は複雑だ。呉座さんの著書も解説書ではあるが、決して平易な内容ではない。それでも多くの読者から支持される理由を呉座さんは「当時の混沌(こんとん)として先の見えない状況を、読者は今、我々が生きている現代と重ね合わせて読み、リアリティーを感じているのかもしれない」と分析する。

     発行部数は、45万部を突破。読者にビジネスマンが多いことも「意外」と呉座さん。「これまでなら、織田信長や豊臣秀吉ら英雄、偉人の成功例から学ぼうとする人が多かったと思うが、応仁の乱からは反面教師として学ぼうとしているように感じる。新しい傾向だ」と指摘する。「先の見えない時代だからこそ歴史からヒントを得ようとしているのではないか。中世のような激動の時代は、変化の目まぐるしい現代を生きる我々にとって参考になると思う」

     本書の刊行は昨年10月だが、応仁の乱が始まって550年となった今年に入って一気に発行部数を伸ばした。日本史を読み解く本は現在、日文研准教授、磯田道史さん『日本史の内幕』などが売れており、来年以降もブームは続きそうだ。【須藤唯哉】

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 日産会長逮捕 ゴーン神話「数字の見栄え良くしただけ」
    2. 高校野球 練習試合で頭に死球、熊本西高の生徒が死亡
    3. 日産 ゴーン会長を解任へ 「会社資金を私的に流用」
    4. ゴーン会長逮捕 日産社長「私的流用、断じて容認できない」 会見詳報(1)
    5. 日産会長逮捕 再建神話、地に落ち 社員に衝撃と動揺

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです