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余録

歳時記などで「凩」を引くとよく三つの句と出会う…

 歳時記などで「凩(こがらし)」を引くとよく三つの句と出会う。一つは江戸時代の池西言水(いけにしごんすい)の「凩の果(はて)はありけり海の音」。言水はこの一句で「凩の言水」と呼ばれた。木枯らしの吹き行く果てから聞こえる海鳴りである▲この句の発想を受け継ぎ、戦争末期の特攻隊の出撃を背景に詠まれたのが山口誓子(やまぐちせいし)の「海に出て木枯帰るところなし」だった。もう一つは芥川龍之介(あくたがわ・りゅうのすけ)の「木がらしや目刺(めざし)にのこる海のいろ」で、木枯らしの季節に海の青をいとおしむ▲木枯らしと海とが結びつくところに名句ありだが、この気候と海との関係、実は俳人や作家たちが思っていた以上に緊密らしい。この冬の日本列島も、伝えられる黒潮の蛇行や遠く南米沖の海水温の影響と無縁ではいられないという▲木枯らしが大方の落ち葉を吹き飛ばした列島に、いよいよ本格的寒波の到来である。今冬は、この先も平年より寒さが厳しくなるらしい。南米ペルー沖・赤道付近の海水温が低くなるラニーニャ現象が6年ぶりに発生したためという▲太平洋の向こうの海水温の低下が、めぐりめぐって列島に激しい北風をもたらす因果の連鎖である。加えて列島南岸を流れる黒潮が大蛇行する今季は過去のデータから東京や日本海側で大雪になる可能性があるとの専門家の話も聞く▲「北窓塞(きたまどふさ)ぐ」は北風に備え、北側の窓を土で塗りふさぐ冬支度をいう季語である。いちいち窓をふさぐ必要のなくなった現代だが、北風の行方、その果てるところの異変からは目を離さぬ方がよさそうだ。

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