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余録

「眼福」とは珍しいものや貴重なものを見ることができた幸福をいう…

 「眼福(がんぷく)」とは珍しいものや貴重なものを見ることができた幸福をいう。のみならず江戸の人は、ありがたいものを見ることで除魔招福(じょましょうふく)の御利益(ごりやく)があると考えたらしい。外来の珍獣はその「ありがたいもの」だった▲「見る者は七難を即滅し七福を生ず」はゾウ、「無病延命」はアザラシ、「痘(ほうそう)(天然痘)を払うの一助」はロバ、「悪病に犯さるる愁(うれい)なく」は「虎」と称したヒョウ。それぞれの見せ物の宣伝文だという(川添裕(かわぞえ・ゆう)著「江戸の見世物」)▲多いのは、やはり子どもの天然痘や麻疹を軽くするという御利益だった。せがむ子どもと珍獣を見に行けば疫病よけになるという次第で、知恵者の興行師の発案か。果ては珍獣を描く絵やちらしが天然痘よけのお札として販売された▲さて、こちらの御利益は何にせよ、関連グッズやあやかりメニューにはこと欠かない。半年前に東京・上野動物園で生まれた雌パンダ、シャンシャン(香香)の一般公開である。上野生まれのパンダ公開は29年ぶりということになる▲何しろ来月末までは観覧者を抽選で1日400組に限り、申し込みが殺到した今週土曜は倍率144倍にのぼったという。まさに幸運でなければ見ることのできぬ文字通りの眼福である。その当選者にして観覧できるのは1分だとか▲当のシャンシャンは木に登ったり、転げまわったり……この年ごろならではの愛くるしい姿は見る人を幸せにする。御利益の計算をめぐらす人たちの思惑はどうあれ、子パンダの「眼福」恐るべしである。

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