メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

くらしナビ・学ぶ

スマホっ子の風景 竹内先生の新教育論 神奈川・座間事件から考える ネットに救い求める危うさ

 神奈川県座間市で悲しい事件が起きました。ツイッターに「死にたい」と書き込んだ若者が殺されたと報道されています。私は長くツイッターなどの短文投稿サイトの危うさを訴えてきましたが、ご遺族の思いを考えると言葉がありません。捜査中ですので、断定的なことは書くのは控えますが、書ける範囲で書いてみます。

    興味同じならつながり簡単に

     ツイッターでは、同じことに興味を持つ人同士が簡単につながることができます。

     試みに「#死にたい」で検索するとこんな書き込みを見つけました。16歳の女性が「家出したいが勇気がない」気持ちを書いています。22通の返信がありました。見てみると「自殺なんて最低。死なないで」「女の子が家出して餌食になるって聞くよ」などの書き込みがありました。さらに見ていくと、男性らしい人が同じ自治体に住んでいると名乗った上で、「はなそ!」「俺の家でよかったら、長期で泊めてあげるよ」と書き込んでいます。

     ツイッターにはDM(ダイレクトメッセージ)の機能があり、ここでは個別に話すことができます。「通信の秘密」が憲法で保障されているので、外部からはよほどのことがないと見ることができません。この書き込みの後、女性が誰とどのような会話をしたのか気になりますが、残念ながらそれをたどることはできません。怖い思いをしていなければよいのですが……。

    「#神待ち」の少女待っていたのは…

     先日、ある新聞記者から「座間の事件を参考にして少女を誘拐した男が逮捕された」と聞きました。「ツイッターで家出したい少女を物色して誘い出したのだろう」と話してくれました。北海道の事件です。

     ツイッターは「#(ハッシュタグ)」をつけると簡単に検索ができます。「#ジャニーズ」と書くと、ジャニーズファンの書き込みが読めます。家出願望のある人の書き込みは「#家出」「#神待ち」で読めます。「神待ち」とは「家出に援助してくれる人(神)を待っている」という意味です。私が中学教諭をしていた10年くらい、ネットでよく見ました。宿泊場所や食事を提供する大人が実際に現れることを、「神様降臨」「神降臨」などと表現します。

    「疲れた」と同義「構ってほしい」も

     こういう状況を高校生たちはどう見ているか聞いてみました。「死にたいって、よく見る」「けど軽い感じの子も多いよね」。「『疲れた……』『失敗した……』とかの代わりに書くって多いかも」。彼ら、彼女らは「死にたい」という言葉に、私たちが思うような深刻な気持ちを込めていないのかもしれません。

     一方、「『かまちょ』が書くことが多いかも」という意見もありました。「かまちょ」とは「かまってちょうだい」の略で、自分に関心を示してほしい子のことらしいです。そのてっとり早い言葉が「死にたい」というのです。

     ショックでした。構ってほしい子どもたちは昔からたくさんいて、「盗んだバイク」で走り出したり、変形学生服でコンビニの前で「うんこ座り」したり……。そういう子どもたちに私たち大人は粘り強く関わってきました。彼らは「殺すぞ!」「教師がなんぼのもんじゃ!」、そんな激しい言葉を使って、教師を含めた大人に「救い」を求めてきました。そういう子どもたちが今は、リアルの大人ではなく、ネット上に救いを求めているとしたらたいへんです。

     こういう書き込みの是非が今、盛んに論じられています。「『死にたい』とネットに書くことで発散できる」という意見も多いですが、そういう言葉に悪意を持つ大人が群がっているのも事実です。

     私たちの社会はたいへんな局面にあります。試されているのは、私たち大人です。=次回は1月16日掲載


     ご意見、ご感想をお寄せください。〒530-8251(住所不要)毎日新聞「くらしナビ学ぶ」係 ファクス06・6346・8104/メールo.news@mainichi.co.jp


     ■人物略歴

    竹内和雄(たけうち・かずお)

     大阪府寝屋川市の中学校教諭、同市教委指導主事をへて2012年から兵庫県立大学准教授。著書に「スマホ時代のリスクとスキル」など。52歳。

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 日産会長逮捕 ゴーン神話「数字の見栄え良くしただけ」
    2. ゴーン会長逮捕 日産社長「私的流用、断じて容認できない」 会見詳報(1)
    3. 日産 ゴーン会長を解任へ 「会社資金を私的に流用」
    4. 高校野球 練習試合で頭に死球、熊本西高の生徒が死亡
    5. 日産会長逮捕 再建神話、地に落ち 社員に衝撃と動揺

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです