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余録

刊行50年を迎え、今も日本社会論のロングセラーである…

 刊行50年を迎え、今も日本社会論のロングセラーである中根千枝(なかね・ちえ)さんの「タテ社会の人間関係」は東大の教授会での着想から生まれた。海外から帰ったばかりの著者は思った。「この感じ、前もどこかで……」▲人類学者の中根さんは日本の各地でも調査を行ったが、この時の教授会が以前に立ち会った漁村の寄り合いを思い出させたのだ。その類似を考察するところから、上下の序列を重視しウチとソトを差別する日本社会の特質を摘出した▲この考察の多くが今もあてはまるから同書が売れ続けるのだろう。だが一方でグローバル化の力学が企業の年功制をはじめ日本社会を大きく変えもしたこの半世紀だ。そのせめぎ合いの中、タテ社会の原形を残す相撲界の騒動である▲横綱の引退を招いた暴行事件だが、一連の騒ぎへの世の関心の盛り上がりがすごい。まず師弟や力士間のタテの人間関係に潜む暴力的な気風が非難の的となったのは、モダンなオフィスでパワハラがまかり通る社会の現実ゆえだろう▲世が驚いたのは相撲協会の調査を拒む被害者側の親方である。テレビのワイドショーなどではいつしかモンゴル勢と貴乃花(たかのはな)親方の確執が最大の関心事となっていた。「国技」をめぐるウチとソトのあつれきが引き上げた視聴率である▲タテ社会の紛糾や対立に世が興奮するのは、そこからの脱却を求めてか、なじみ深かった世界を懐かしんでか。交錯するウチとソト、変わらぬ序列意識と個の不安、日本社会の現在を映す相撲界の大乱だ。

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