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風知草

日中 メディア事情=山田孝男

 「日本のメディアの報道は客観的で公平だ」と考えている日本人は、わずか16%しかいない。

     「中国のメディアの報道は客観的で公平だ」と考えている中国人は75%にのぼっている--。

     この違いは何だろう。

         ◇

     このデータは、日中共同世論調査(日本の「言論NPO」と中国国際出版集団が実施。15日各紙朝刊)に含まれている。

     ここに言うメディアとは新聞、テレビなどのニュースメディアだろう。

     調査は毎年、実施されている。自国メディアを「客観的で公平」と見る人の割合が中国で高く、日本で低い--という傾向自体は10年前から同じ。

     その数字が中国では高位安定しているのに対し、日本の場合、10年前の35%から徐々に減り、今年は16%にまで落ちた。

     思い当たる節はある。

     いま、日本社会は、情報に飢えるどころか、商業メディアが流す情報の洪水にウンザリしている。

     若い世代は新聞も、テレビさえ顧みず、報道の質や報道機関のありように、そもそも関心がない。

     しかも、メディアは現政権の評価などをめぐって分裂、対立している。

     「メディアは客観的で公平か」と聞かれれば、×をつけたくもなろう。

     ただし--。

     それは報道を信用しないということとは違う。

     「メディアを信頼しているか」と聞いた別の調査では、100点満点で(1)NHK69・8点(2)新聞68・6点(3)民放59・1点--が上位を占めている。

         ◇

     今年10月、習近平中国国家主席が言った。

     「党の指導と社会主義制度を堅持し、否定する一切の言動に断固反対しなければならない」(第19回共産党大会活動報告)

     中国のメディア統制は公然の秘密である。

     米企業が運営するグーグルも、ツイッターも、フェイスブックも中国では利用できない。共産党が「治安にとって有害」と判断する情報の検閲・削除に協力しないからである。

     報道の自由はなく、「党や政府の宣伝をすることがメディアの重要な役割」になっている(日中知識人座談会の中国側発言=「中央公論」新年号)。

     そうである以上、世論調査で「中国メディアは客観的で公平か」と聞かれ、×を選ぶ人は少なかろう。その選択は<反党行為>に近い。日本では世論調査にどう答えようと無害だが、中国では、世論調査に答えること自体、リスクである可能性がある。

     中国はネット言論も統制している。専任の検閲官は500万人ともいう。監視社会に違いない。

     デジタル化が進む中国は便利さと引き換えに個人情報を把握される社会になっているが、この側面は日本社会の現実でもある。

         ◇

     今月中旬、北京で開かれた第13回東京-北京フォーラム(「言論NPO」と中国国際出版集団主催)に参加し、中国の記者と討論する機会があった。

     中国側は政府見解に沿う発言が目立ったが、じかに接した中国の記者たちは今を生き延び、気長に変化を待つという印象。

     日本側の出席者から言論統制をめぐる質問が相次いだ時、「絶対的に自由な報道などありえない」と気色ばんだ古参記者がいた。公開討論でヤボな話を持ち出すなよ--という意味だったかもしれない。=次回は1月8日に掲載します

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