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社説

危機の社会保障 克服への課題 「1強」の政治資源を生かせ

 人口の多い団塊世代が75歳以上になる2025年はすぐやってくる。その後も75歳以上の人口は増え続け、現役世代は急激に減っていく。

     政府は高齢者に偏った社会保障を若年層にも広げ、出生率の改善に取り組んではいる。だが、生まれてくる子供が社会を背負うのは20年以上先のことだ。目前に迫った高齢化の危機に対処することはできない。

     このままでは、日本の社会保障が崩れてしまう。政府一丸となって、最優先で取り組むべき課題だ。

     まず労働力と財源を確保しなければならない。安倍政権は介護人材の処遇改善を図ってきたが、現場の働き手不足は続いている。特に要介護者が急増している首都圏は深刻だ。

    介護職の絶対的な不足

     介護福祉士の資格を取得できる全国の大学・専門学校は定員割れが著しく、昨年度は平均して5割を切るまでに落ち込んだ。

     介護の仕事に関心のあるシニアはたくさんいる。定年後の第二の人生を介護職として送る人が、もっと増える方策を考えたらどうだろう。

     子育てや家族の介護で働いていない看護師・介護士も多い。個々の事情に合った柔軟な働き方を認め、潜在的な労働力の活用に努めるべきだ。病気や障害がある人の働く機会を広げることにもつながる。

     それでも国内だけで必要な数の介護職員を養成できるだろうか。25年には37万人の介護職が不足すると懸念されている。

     厚生労働省は11月から外国人技能実習生が介護の仕事もできるようにした。しかし、日本で働けるのは基本、3年間に限られている。高い水準の日本語習得が求められ、働ける介護施設も制限されている。その場しのぎではなく、長期的な視点で外国人介護士の導入を検討すべきだ。

     医療のとらえ方も変えなければならない。今や、認知症や生活習慣病が高齢化の中心的な課題である。「病気を治す」から「生活を支える」を軸にした医療へ転換すべきだ。

     日本は入院のための病床が多く、入院期間が長い。精神科病床は約33万床あり、5万人以上の認知症の高齢者が精神科病床を埋めている。狭い病室に閉じ込められ、身体拘束が横行しているとの批判も強い。治療よりも、ケアが必要な人が病院にとどまっているのだ。

     入院中に認知症の症状がひどくなった人を病院から引き取り、家庭的な環境と手厚いケアで症状の改善に成果を上げている小規模なNPOがある。医療から介護の場へ移せる人はもっと多いはずだ。

     こうした改革を大胆に進めるには政治の強い意思が必要だ。

     今秋の衆院選で自民党はほぼ公示前の勢力を維持し、公明党を含む与党の議席は3分の2に達した。14年の前回総選挙に次ぐ圧勝で「安倍1強」を揺るぎないものにした。

    優先順位の組み替えを

     政府に求められる仕事は無限にある。外交や安全保障、経済・エネルギー政策、老朽化したインフラの再建、大震災の復興も道半ばだ。いずれも膨大な財源や人的資源の必要な重要課題であることは間違いない。

     しかし、こうした政策は国民の健康や安心できる暮らしを土台にして成り立っている。安倍政権は政策の優先順位を組み替えてでも、社会保障の立て直しを進めるべきだ。

     いずれの課題もさまざまな業界や官庁の利害が絡み合い、強固な基盤を持つ政権でなければ実行できない。恵まれた政治資源を手に入れたからこそ、長期的視野に立つ社会保障の再構築が可能になるはずだ。

     社会保障の財源確保のためには負担増という国民に不人気な政策も避けて通れない。医療や介護の費用は保険料と税で賄われているが、現役世代が拠出する健康保険は赤字の組合が増加の一途をたどっている。

     経済的に恵まれた高齢層にも負担をしてもらわないと現役世代は疲弊していくばかりだ。しかし、選挙では高齢層ほど投票率が高く、各政党とも高齢者の負担増につながる政策は避け続けてきたのが実情だ。

     安倍政権が「1強」の政治資源を生かすのはこうした局面をおいてほかにはない。

     先進国はどこも高齢化に直面している。その先頭を走る日本こそ、克服モデルを構築すべきだろう。将来にわたり、この国を維持していくためのチャレンジである。

           ◇

     「危機の社会保障」シリーズは今回で終わります。

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