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香山リカのココロの万華鏡

シャンシャンに癒やされる /東京

 上野動物園で生まれたパンダの赤ちゃん、シャンシャンが公開された。観覧するには抽選に申し込まなければならないが、すごい倍率で、私も見事にはずれた。記念切手もすぐに売り切れ、買うことができなかった。

     コロコロ、フワフワした赤ちゃんパンダは無邪気そのもので、木登りをしたり母親にじゃれたりしている映像は見ていて飽きない。運良く観覧できた人たちは、インタビューに「本当にかわいらしかった」「癒やされた」と答えていた。

     「かわいい」はわかるが、パンダに「癒やされる」とはどういうことか。心理学的に言えば、小さな子どもは、ひとりで歩いたり遊びに出かけたりできるようになっても、ときどき毛布やタオルを手放さないことがある。全面的に親に守られていた日々からたくさんの他人と過ごす社会生活へと移っていくとき、やわらかい素材でふわっと包み込んでくれるような毛布が心強い味方のように思える時期があるのだ。

     そして、おとなになってからも疲れたとき、ちょっと弱っているときなど、私たちは子ども時代のようにタオルケットに顔をうずめたくなることがある。ペットのネコを抱きしめることもある。そのやわらかさやぬくもりが、「だいじょうぶ。あなたはこれからもちゃんとやっていけるよ」と自分を応援してくれているように思えるのだ。

     動物園で生まれたパンダの赤ちゃんを見て、私たちはその愛らしさにほほ笑みながら、同時にそのフワフワ、コロコロかげんが自分をそっとなぐさめ、励ましてくれていると感じているのではないだろうか。「今年も一年、乗り切りましたね。あなたのがんばりを私はちゃんと知ってますよ」とどこかからささやく声が聞こえる、というのも私だけではないだろう。

     そういう意味でも、誰もがこの一年を振り返り、自分やまわりの人たちに「おつかれさま」と声をかける年末にシャンシャンが公開されたのは、私たちにとって何よりの「癒やし」だったのではないだろうか。

     さて、来年はどんな一年になるだろう。シャンシャンはきっとたくさん食べて寝て、たくましく成長していくに違いない。私たちも無理せず、でもくじけずに、毎日の生活を大切にしながら自分らしく過ごしたい。そして疲れたらまた動物園に出かけ、フワフワ、コロコロしたパンダや他の動物たちに癒やされてもいいだろう。来年もよい年になりますように。(精神科医)

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