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変革

第5部 JR東日本/19 海外本格進出、試練も

タイ人技術者(左)にパープルラインの車両の点検を指導する阿部格=タイで10月、浅川大樹撮影

 「海外鉄道プロジェクトに積極的に参画する」。JR東日本は2012年、経営計画で海外進出を宣言した。人口減少で国内鉄道事業の伸びが期待できない中、海外鉄道市場は20年に二十数兆円規模に成長すると見込まれた。「宣言」から5年余、取り組みが本格化しつつある。

     昨年8月にタイにお目見えした、首都バンコク北部のバンスー地区と北西部郊外のバンヤイ地区を結ぶ都市鉄道「パープルライン」では、山手線最新車両と同型のステンレス製列車が走る。JR東が丸紅、東芝と組んで10年間の車両や信号など設備の保守業務を落札した海外第1号案件。タイは従来、車両から運行システム、保守まで提供する独鉄道メーカー、シーメンスの牙城だったが、「日本並みの安全・定時運行を提供する」と訴えて風穴を開けた。

     古い住宅と緑地が点在するバンヤイ地区にあるパープルラインの車両基地。JR東から出向中の車両担当マネジャー、阿部格(40)は10月下旬、現地スタッフに車両の点検を指導していた。「車両ドアのゴムは傷んでいないか」と問う阿部に、スタッフはうなずき、淡々と作業を進めた。5年前の入札準備から関わる阿部は「日本のやり方は通用しない。模索の毎日だ」と語る。車両部門の現地スタッフは30人いるが、目上を尊重する国民性から、阿部ら上司と話すのは職位が高い技術者だけ。指示してもうなずくだけで、どこまで理解しているか、測りかねることも多い。「文化の壁」に苦労するが「現場発のカイゼンを実現したい」と意気込む。

     JR東は今月10日、三井物産などと共同で英国中部を走るウェストミッドランズ鉄道(総延長約900キロ)の運行も始めた。運行に加え、車両の提供や保守作業を10年間担う。JR東社長の冨田哲郎(66)は「収益は大きくないが、(損失)リスクも少ない。最初の海外運行への挑戦として適切だ」と説明する。もともと内需企業だったJR東の国際事業本部の陣容は230人程度。タイや英国は「身の丈」も考えて慎重に選んだ進出先だった。

     そんなJR東にとって政府主導で決まったインド高速鉄道計画(ムンバイ-アーメダバード間、約500キロ)は大きな試練だ。「総事業費1・8兆円」「JR東の新幹線を採用」と華やかに報じられるが、23年開業に向けた用地確保や建設態勢はこれから。9月には両国首脳が出席し、起工式を開催。現地で準備にあたったJR東課長の小林直樹(52)は「期待の大きさを感じた」としつつも「物事が全て円滑に進まないと、(23年開業の)工程は厳しい」と明かす。これまでの海外案件とは異質の「国の威信がかかる事業」(幹部)に社内では緊迫感が漂う。(敬称略)=次回は「脱自前、脱エリートへ」です


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