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社説

丸5年迎えた安倍内閣 懐深く合意の政治目指せ

 安倍晋三首相が政権に返り咲いてから、きょうで丸5年となった。第1次内閣と合わせ、既に在任期間は戦後3番目の長さとなっている。

     長期政権が実現したのは、一言で言えば、安倍首相が自民党総裁に返り咲いて以降の衆参両院選で自民党が大勝し続けているからだ。

     選挙の結果は重い。だが国会で与党が圧倒的多数を占める政権基盤の厚みを生かして長期的な課題に腰を据えて取り組んできただろうか。残念ながらそうとは言えない。

     今年は「森友」「加計」問題をはじめ、長期化する「安倍1強」のひずみが明らかになってきた1年だった。安倍内閣の支持率は最近、持ち直してきているが、不支持の理由に政策よりも首相本人が評価できないという点を挙げる人が増えている傾向は変わらない。

    国民に消えぬ将来不安

     5年間を振り返ってみる。まずアベノミクスだ。

     第2次内閣発足直後、日銀の「異次元の金融緩和」により円安が進み、恩恵を受けた輸出産業を中心に株価は上昇した。首相が再三、例示する有効求人倍率などいくつもの経済指標は好転した。

     それでも肝心の個人消費は狙い通りに伸びない。当初2年で達成することを目指していた物価上昇率2%の目標は実現に程遠く、今も「デフレ脱却」宣言に至っていない。大きな理由は国民の間にある「将来への不安」が解消されないからだろう。

     「地方創生」「1億総活躍」「働き方改革」等々、政権は次々キャッチフレーズを繰り出してきたが、最重要課題であるはずの少子高齢化への危機感は乏しく、対応は中途半端に終わっている。

     当面の景気を優先して消費増税を2度先送りする一方、「アベノミクスのエンジンをふかす」を掛け声に経済対策の名の下で歳出は膨張し続け財政再建のめどは立たない。

     外交・安全保障はどうか。首相が積極的な首脳外交を展開し、主要7カ国(G7)の中でも経験豊富な首脳の一人となった点は評価したい。

     ただし首相が「国難」と言う北朝鮮問題は米国頼みなのが実情で、解決の兆しは見えない。特に米国のトランプ政権が誕生して以来、日米関係偏重に加え、防衛力の増強路線が一段と進んでいるように見える。

     確かに米国との良好な関係が日本外交の基本だが、「エルサレムはイスラエルの首都」と認めたトランプ大統領に国際的な批判が高まる中、大統領との距離をどう取っていくのかは今後の大きな課題だ。

     特定秘密保護法、安全保障法制、「共謀罪」法など、首相は選挙戦では「経済最優先」を口にしながら、勝てば与党の数を頼りに国論を二分する法律を強引に成立させてきた。

     民主政治は国民を分断するのではなく、極力合意を目指すべきものだ。大切なのは少数意見の尊重と徹底した議論である。にもかかわらず首相はそうした手続きを怠ってきた。

    出始めた自民党の異論

     見逃せない首相の発言が最近もあった。共同通信が加盟新聞の幹部らを集めて開いた会合での講演だ。

     首相は、新聞を購読する人が多い高齢者より、そうではない若い世代が安倍政治に理解を示していると指摘して、「SNSなどが発達した時代に(若者は)多様な情報を集め自分で判断している」と評価した。

     実際、世論調査では若い世代の方が安倍内閣の支持率は高い。しかし、この発言は、自分の支持者は正しく、異論を呈する者は間違っているという思考の表れではないか。

     今秋の衆院選での自民党の勝利は野党の分裂という敵失によってもたらされたと多くの自民党幹部が認めている。首相自らが招いたとも言える「森友」「加計」問題も疑念は解消されず年を越す。

     これまで官邸主導だった政策決定に対し、衆院選後、自民党内から異論が出始めているのは、国民の間に「安倍離れ」が起きていると感じているからに違いない。

     来秋には自民党総裁選がある。首相が3選されれば2021年秋まで、つまり憲政史上最長の計10年近くの政権となる可能性が出てくる。

     首相の最大目標である憲法改正も来年の課題となる。だがこれも進め方によっては日本社会の分断を招く恐れがある。そもそも社会保障などに比べて改憲に対する国民の優先順位は今も高いとはいえない。「10年政権」を目指すのなら、まず「合意の政治」に転じるよう強く求める。

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