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余録

「常世の国」は日本の古代人が…

 「常世(とこよ)の国」は日本の古代人が海の向こうにあると信じた不老不死の理想郷である。古事記や日本書紀にはそこからもたらされた「非時(ときじく)の香果(かぐのみ)」の話がある。いつもかぐわしい香りを放つ果実という意味である▲天皇の命で常世へ赴き、この果実を持ち帰ったのが田道間守(たじまもり)という人物だった。果実は「橘(たちばな)」と呼ばれたが、今のタチバナともキシュウミカンともいわれる。この田道間守がお菓子やみかんの祖神として祭られるようになったという▲冬にも黄金色の実と緑の葉をもつかんきつ類を太陽と不老長寿のシンボルにみたてたご先祖だった。正月飾りや鏡餅に添えられるのもその霊力を信じてのことだが、そう思えば寒い夜のコタツの上のみかんも小さな太陽に見えてくる▲そのみかんの卸売市場の相場が供給不足により21年ぶりの高値という。日本農業新聞によれば、供給減の原因の一つは秋の天候不順だが、それにも増して生産者の高齢化や園地の老木化という生産基盤の弱体化が影響しているようだ▲いわれてみれば確かに傾斜地の多いみかん園での手作業に頼る生産は高齢者には厳しい。樹齢50年以上の老木の更新も進まず、木の疲れも深刻らしい。この先、安定した生産の確保は難しく、労働負担の軽減などの対策が必須という▲「みかん黄にふと人生はあたたかし 高田風人子(たかだふうじんし)」。だが、みかんの需要も最盛期の約4分の1に減っている。常世からやってきた太陽と生命の果実の老化と先細りがちょっと心配な日本社会の明日である。

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