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社説

米法人減税と世界経済 引き下げ競争を懸念する

 「米国第一」に世界が振り回されることにならないだろうか。

     トランプ米大統領が看板政策に掲げてきた法人減税などの税制改革法が成立した。減税規模は1・5兆ドル(約170兆円)とレーガン政権以来約30年ぶりの大型改革となる。

     米国経済の成長を加速させれば、世界経済にもプラスに働くだろう。だがトランプ氏の狙いは、米国企業の競争力を高めて国内の雇用を確保することにある。世界最大の経済大国が自国優先の政策に突き進むと世界経済をゆがめる恐れがある。

     まず懸念されるのは財政赤字だ。

     トランプ政権は減税による経済成長で税収を増やすとしている。ただ減税分を埋められず、財政赤字が1兆ドル拡大するとの試算もある。

     レーガン政権でも財政と貿易の「双子の赤字」が進んだ。米国経済が不安定化すると世界に波及する。

     さらに気がかりなのは法人税引き下げ競争をあおりかねないことだ。

     1980年代ごろから外資誘致を図る新興国が先行し、欧州や日本も対抗して下げてきた。米国は今回、税率を35%から一気に21%に下げ、日本やドイツ、フランスを下回る水準とする。日本の経済界からは一段の減税を求める声が出ている。

     競争が激しくなると、各国の財政悪化が予想される。所得税や消費税の増税で賄おうとすれば、家計にしわ寄せが及ぶ。既に欧州各国は法人減税と並行して付加価値税(消費税に相当)を増税してきた。

     また課税逃れ対策にも水を差す。

     これまでの法人税引き下げ競争に伴い、税率が極端に低いタックスヘイブン(租税回避地)が生まれた。多国籍企業が巨額の課税逃れに利用するケースが次々と問題化した。

     防止には国際的な連携が欠かせない。日欧など60以上の国・地域は今年6月、迅速に対応できる統一ルールを導入する条約に署名した。

     しかし、米国は署名しておらず、条約の効力をそぐと懸念されている。さらに米国の減税を引き金に各国も減税に走ってしまえば、課税逃れ対策の機運もしぼませてしまう。

     課税は各国の主権にかかわる問題である。しかし引き下げ競争の弊害は大きい。米国は超大国として国際協調をリードする役割があるはずだ。その責任を自覚してほしい。

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