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余録

戦後間もない国語審議会で…

 戦後間もない国語審議会で当用漢字を選んでいた時のことだ。「魅」という字をどうするかで漢字制限派の学者が「魅力、魅惑、魑魅魍魎(ちみもうりょう)の3語でしか使わないから要らない」と主張し、外されそうになる▲結局、当用漢字になったのは作家、山本有三(やまもと・ゆうぞう)の冗談半分の一言のおかげだった。「しかし、魅力と書けないと日本語に魅力がなくなる」(大野晋(おおの・すすむ)著「日本語と私」)。教育の普及を大義名分とする漢字廃止論が唱えられた時代であった▲選ばれた1850字の当用漢字も、漢字廃止までさしあたり用いる字という趣旨だった。それから70年余、現代日本で使われている漢字はどれくらいの数なのか。調べたら約6万字という。戦後の漢字廃止論者が聞いたら目をむこう▲その約6万字をコンピューターで扱うための国際統一規格化が完了したという先日の発表だ。今まで統一文字コードが割りふられた漢字は約1万字にすぎなかった。今後は地名や人名の異体字などもコンピューターで一括して扱える▲例えば「斎藤」や「斉藤」の「さい」には約60種に及ぶ漢字があるが、今まで扱えたのはその4分の1程度だった。こうした人名など、互換性のない外字に頼ってきたデータが正確にやり取りでき、ビッグデータの活用も容易になる▲アルファベットですべてを表す言語と比べ、互換性のない漢字は日本の人工知能(AI)開発でもハンディになっていたという。その障壁を一つ破ったところでAIにも感じてほしい日本語の「魅力」である。

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