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インタビュー

YOSHIKIさん AIはライバルでなく友に

=中村藍撮影

 音楽や絵画、小説といった芸術の分野でも、AIの進展は目覚ましい。

 大阪大などの研究グループは2017年1月、曲を聴いた人の脳波を計測し、その人の好みに合わせた曲を自動作曲するAIを開発した。ソニーコンピュータサイエンス研究所は、多様なジャンルの曲を学習したAIが「ビートルズ風」といった注文に沿って作った曲を発表。グーグルでも、AI自らが学習を繰り返すディープラーニング(深層学習)によって楽曲やアート作品を生み出すプロジェクトが進行している。公立はこだて未来大などのチームが取り組むのは、AIを使った小説執筆。16年3月には、人が考えたあらすじをAIが文章にした作品が文学賞の1次選考を通過したことが分かり、世間を驚かせた。

 AIが人を超える創造性を持つ可能性に、脅威を感じる人もいるかもしれない。創作の第一線で活躍する芸術家は、どう捉えているのだろうか。世界中にファンを持つロックバンド「X JAPAN」リーダーのYOSHIKIさんに聞いた。【聞き手・曹美河】

心の痛み、音符に

 --AIによる自動作曲の技術が進んでいます。音楽業界におけるAIの未来をどうお考えですか。

 音楽って基本的に数字なんです。音符と音符の組み合わせ、音の強弱やテンポ、コード進行などはすべてデータ化できる。例えば過去のあらゆるヒット曲のデータをAIに入力すれば、ヒット曲は作れてしまうと思うんです。音楽業界でAIが活躍する未来は、そんなに遠くないと感じています。

 ただ同時に「曲が売れる(ヒットする)」ということに、そんなに意味があるのかなと僕は思ってしまうんですね。「売れたい」つまり「お金を稼ぎたい」ということであれば、もっといい職業ってありますよね。わざわざ芸術家である必要はないわけです。

 --YOSHIKIさんは、なぜ作曲を。

 メロディーってなんか突然降ってくるというか、説明不可能なもの。メロディーができた瞬間は自分でもゾクゾクするし、そのメロディーによって、自分自身が癒やされるのを感じます。

 僕は10歳の頃、父を自殺で亡くしました。その頃から作曲は始めていて、どうしようもない悲しみや怒りを音楽を通して表現した。そこに没頭するだけでも、自分は救われていたと思います。音楽という芸術表現があったからこそ、僕は今まで生きてこられたと思うんですね。作曲は、目の前に広がる芸術という海に飛び込んでいくイメージ。それが血の海でも、血だらけになって真っ赤に染まって、(代表曲の)「紅(くれない)」じゃないですけど、そういうふうに曲を作っています。

 --AIによる「ビートルズ風」の曲が作られています。将来「X JAPAN風」の曲ができ、「X JAPAN」の曲を超えることはあるでしょうか。

 「X JAPAN風」の曲は、できるんでしょうね。ただ、作曲って理論だけじゃなく、自分の感情から出てくるものをいかに音符にするかという作業。音楽に限らず絵画でもなんでもそうだと思うんですが、どんなに理論を学んでも、それだけでいい芸術ができるとは思いません。

 例えば「Without You」という曲は、メンバーのHIDE(1998年死去)のためにかいた曲です。当時バンドが解散して、数カ月後にHIDEが亡くなって……。お葬式などを終え、ロサンゼルスの自宅で1人になった瞬間、急に悲しみに襲われ、何もできなくなってしまいました。家からも出られなくなってしまった。このままじゃいけないと思って、HIDEのために、存在しないX JAPANのために、この曲をかきました。こうした曲をAIが作ろうと思ったら、今までに僕らに起こったすべての経験値をデータにして、入力しなきゃいけないと思うんです。まあ、結構いいところまでAIも行くかもしれないけど……。どうですかね。やはり理論じゃ語れない「何か」が芸術の中にあると、そう思いたいですよね。すべてAIにできてしまったら、自分たちの存在価値がなくなってしまうので。

 --分からない「何か」が人間の創作にはあると。

 そうですね。ただ僕は、AIには絶対できないとも思っていないんです。人間の感情をデータ化できた時、AIが心を持つ日が来るのではと思います。

「芸術は理論だけじゃない」

 --もしも、YOSHIKIさんのAIができるとしたら。

 なんか、すぐ壊れちゃいそうですよね(笑い)。僕は昨年5月に(長年のドラムプレーで痛めた)首の手術をして、人工の椎間板(ついかんばん)を入れたんです。残る椎間板もつぶれる寸前で、ドラムはドクターストップがかかってしまっていますが、僕はたたく気でいるんです。それは自分の存在価値とか、いろいろなことを考えるからなんですけど。でもAIは多分、しないんじゃないかな。やはり、医者の言うことを聞くと思うんです。だから、完璧に僕を再現したAIを作ると、AIが自己破滅するんじゃないかな(笑い)。

 --AIによる演奏の可能性について、例えばHIDEさんのギターを再現できると思いますか。

 ステージでの生身のパフォーマンスを考えると、AIとの差はまだ大きいと思いますね。やはり演奏って、内面から出てくるものがある。彼の生い立ちから彼の人格が形成されて、そこからHIDEが鳴らすギターのビブラートとか、HIDEの声とかが生まれて、それは決して表面からだけでは再現できない。生い立ちをすべて把握できなければ、かなりいいところまで近づけても、HIDEにはなれないと思いますね。

 --最後に、AIはライバルになり得ますか。

 ライバルっていうよりも、友になっていければいいと思います。対人間だって、見方だと思うんですね。自分がどう捉えるかによって、親友だってライバルに思えてきちゃう。最初にお話しした、「何のために音楽をやるか」ということに尽きると思うんです。「音楽で売れたい」って思ったら、AIが脅威になる可能性はあります。でも見方を変えれば、そういうふうには思えないんじゃないかな。

 これまでもデジタル技術の発達によって、作曲の選択肢はどんどん広がっています。デジタル化のいいところはいっぱいあって、使わない手はない。同じようにAIも、「心の友」だと思って、共存していければいいと思います。

 --もし将来、完璧なHIDEさんのAIができたら、共演してみたいですか。

 そうですね……。HIDEのことを考えるとやはり、アナログ(生身)のままがいいな。


 ヨシキ 「XJAPAN」リーダー(ドラム・ピアノ)。千葉県出身、米ロサンゼルス在住。4歳でピアノ、10歳ごろドラムを始める。幼なじみのToshlさんらと結成したロックバンド「X」(後の「XJAPAN」)で1989年メジャーデビュー。97年末、Toshlさんの脱退を機に解散、翌98年5月にメンバーのHIDEさんが急逝した。失意の時を経て2007年にバンドを再結成、現在は世界を舞台に活躍する。ソロとしても、天皇陛下即位10年を祝う奉祝曲(99年)や、米ゴールデン・グローブ賞のテーマ曲などを手がけ、高い評価を得ている。バンドの壮絶なドラマに迫ったハリウッド製作のドキュメンタリー映画「WE ARE X」(17年日本公開)は28カ国・地域で上映され、現在ブルーレイ・DVDが好評発売中。

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