メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

クローズアップ2018

北朝鮮、米韓分断狙う 時間稼ぎの見方も

 国政方針演説「新年の辞」で1日、対米強硬姿勢と韓国への接近の硬軟両様の姿勢を示した北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長。その思惑と、韓国の受け止めや米国、中国の対応を探った。

     「わが国の国家核武力は米国のいかなる核の脅威も粉砕し対応できる強力な抑止力だ」。金氏は「新年の辞」で米国に「核の威嚇」を行った。これとは対照的に、韓国に向けては「凍結状態にある北南関係を改善し、民族史に特筆すべき重大な年として輝かせなければならない」と対話の用意を示した。こうした発言の思惑について、韓国や米国の専門家、メディアなどは、米韓関係にくさびを打ち込んで距離を置かせつつ、最終的には米国との直接対話で体制保証を取り付けるための手段との見方が出ている。

     韓国・明知大学の尹洪錫(ユンホンソク)客員教授(北朝鮮政治・社会)は、核・ミサイル開発に対する国際社会の経済制裁が北朝鮮にとっても「無視できない水準になっている」と指摘。北朝鮮としては米国との直接対話で核保有国としての立場を認めさせ制裁を取り除くことが最終的な目標だが、これが困難なため、「韓国との対話を通して、米国に対するメッセージを送ろうとしている」と分析する。南北対話を進めていけば、米国は反発しながらも、核問題を前進させるために北朝鮮との接触を始めるかもしれないと金氏が期待しているとの見方だ。ただ、北朝鮮が単に時間稼ぎをしている可能性も否定できないという。

     米国のニューヨーク・タイムズ紙は金氏の演説について「長年の米韓同盟にくさびを打ち込もうと図るもの」と指摘。北朝鮮との対話も志向する韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と、圧力強化を図るトランプ米大統領との間にあつれきが生じており、米国による北朝鮮攻撃に対する拒否権を韓国が持つとの文大統領の姿勢が米国を怒らせたと指摘。こうした米韓の対立を、北朝鮮が突いてきたと分析している。

     文大統領は2日、金氏の発言について「平昌五輪を南北関係改善と朝鮮半島の平和の画期的な契機にしようという我々の提案に呼応したと評価し、歓迎する」と前向きの受け止めを示した。さらに、「平昌五輪を南北平和構築と北朝鮮核問題の平和的解決に結び付けられるよう、国際社会と協力して最善を尽くす」と発言。南北関係改善と核問題解決を同時並行したいとの考えをアピールした。9日の南北高官級会談を提案した趙明均(チョミョンギュン)統一相は、事前に米側と協議したことを示唆し、米国への配慮も示した。

     ただ、韓国内には、北朝鮮が核・ミサイル開発の推進を維持する方針を示し、米韓合同軍事演習も中止を求めていることから、安易に対話を進めることへの慎重論も出ている。中央日報は対話を「突破口」と歓迎しつつも、北朝鮮が米韓同盟に「亀裂」を作ろうとしているとの分析があることに言及した。朝鮮日報は、平昌五輪への参加や南北対話が実現しても、北朝鮮が核兵器を廃棄するはずがないと指摘。南北の接近は、北朝鮮の核武装に「政治的、時間的な余裕を持たせてしまう」と否定的な見解を示した。【ソウル米村耕一、大貫智子】

    米、演習延期が焦点

     金氏の演説を受けトランプ米大統領は2日、「制裁などの圧力が大きな影響を与え始めた。ロケットマン(金委員長の蔑称)は韓国と対話をしたいと言い出した」とツイートした。北朝鮮の核・ミサイル開発に対する自らの圧力強化路線が一定の成果を生んだとの見方を示した形だ。また、米国務省報道担当者は韓国との「足並みをそろえた対応」に言及。米国の意向を無視して韓国が北朝鮮に近づき過ぎることを警戒し、米韓などが協調して国際包囲網を維持する必要性を示唆した。

     ただ、北朝鮮対応でトランプ政権内部は必ずしも一枚岩とは言えない。北朝鮮に対する経済制裁や軍事的圧迫など、「圧力の最大化」を志向するトランプ大統領と、「条件なしでの対話」の可能性に一時言及したティラーソン国務長官の路線対立が浮上した局面もあった。両者の方針の違いは、ティラーソン氏が後に圧力路線にあらためて言及することでいったんは収束したが、今後も表面化する可能性は否定できない。

     米国の今後の対応の焦点の一つは、米韓合同軍事演習を延期するかどうかだ。金氏は今回、「朝鮮半島の平和的環境をつくる」ためと称して、演習の中止を改めて求めている。

     米韓両軍は例年、2~4月にかけて、野外機動訓練や指揮系統を確認する演習を韓国で実施。今年は、平昌五輪・パラリンピックに実施時期が重なる。北朝鮮の五輪参加を関係改善の契機としたい韓国政府は、「北朝鮮の行動によっては演習の延期を検討する」との立場だ。マティス米国防長官は昨年12月29日、「外交問題を理由に軍事演習を一定期間中断することはない」と述べつつ、実施時期は「常に調整している」と記者団に発言し、延期の可能性に含みを持たせた。

     一方、中国の耿爽(こうそう)外務省副報道局長は2日の定例記者会見で南北対話の機運を「良いことだ」と歓迎した。中国としては緊張緩和や対話促進を理由に、米韓演習凍結論を改めて訴えるとみられる。【ワシントン高本耕太、北京・河津啓介】

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 日産会長逮捕 ゴーン神話「数字の見栄え良くしただけ」
    2. ゴーン会長逮捕 日産社長「私的流用、断じて容認できない」 会見詳報(1)
    3. 高校野球 練習試合で頭に死球、熊本西高の生徒が死亡
    4. 全国高校サッカー 県大会 西京、5年ぶり全国切符 高川学園の猛攻しのぐ /山口
    5. 日産 ゴーン会長を解任へ 「会社資金を私的に流用」

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです