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余録

彼は地球の大きさを知りたかった…

 彼は地球の大きさを知りたかった。測ってみたかった。家業を息子に譲り、天文学や測量技術を学ぼうと江戸に出る。50歳の手習いだ。伊能忠敬(いのうただたか)の日本地図作りがこうして始まった▲実測は「蝦夷地(えぞち)」と呼ばれた北海道に始まり、10次にわたる。旅は苦闘続きだった。入り組んだ海岸線の踏破にてこずり、現地案内人が藩の機密漏れを恐れて地名を言わないこともあったと記録にある▲61歳の春には、今の山口県でマラリアにかかり長く療養した。晩年になると「歯がすっかり抜け、奈良漬けも食べられない。悲しい」という手紙を娘に送っている。約4万キロを歩いて測量を終えた時、忠敬は71歳だった▲その陰には、宿を提供したり、現地で作業を手伝ったりした人たちの存在もあった。測量日記には1万2000人の名が残る。そこで伊能忠敬研究会は2年前、彼らの子孫たちに名乗りをあげてほしいと協力者の名前を公開した▲これまで約100人の申し出が寄せられている。先祖が歴史的な取り組みにかかわったことを初めて知った人も多い。新たな記録や品物も見つかった。忠敬の没後200年を迎え、4月には東京都内で式典を開いて子孫に感謝状を贈る▲研究会の戸村茂昭(とむら・しげあき)さんは「協力者あっての偉業でした。そうした人たちにも光をあてたい」と話す。年齢や困難を乗り越えて奮闘する姿が、多くの人々を手助けへと動かしたのだろうか。自らの探究心や好奇心にふたをせず、挑み続けた忠敬の姿勢は今の時代も色あせていない。

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