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社説

「日韓合意は間違い」発言 同じ土俵に乗らぬ賢慮を

 国内事情優先で歴史問題を扱えば外交に悪影響を与える。そうした認識が欠けているのではないか。

     韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が慰安婦問題をめぐる2015年の日韓合意について「内容と手続きのすべてが間違っていた」と語った。全面否定に等しい言葉である。

     昨年末に公表された検証報告書に基づく発言だ。政権としての方針は来週初めにも公表するというが、大統領が公の場でこうした評価を示したことの影響は大きい。

     報告書の核心は、朴槿恵(パククネ)前政権が当事者である元慰安婦の思いを十分にくみ取らないまま合意したという批判だった。通常の外交ルートではなく首脳の側近による「秘密交渉」だった点も問題視された。

     しかし、元慰安婦の7割以上は合意に基づいて設立された財団の事業を受け入れた。外交当局による折衝が行き詰まった時に別の窓口を使うのも珍しいことではない。

     韓国での合意反対論の根底には、罷免された朴前大統領の業績を全否定しようとする流れがあろう。

     文政権は政府機関の多くに特別チームを送り込み、前政権の問題点を洗い出している。日韓合意の検証も同じ文脈で行われた。

     そうした空気の中では、前政権が屈辱的な対日外交をしたという構図が描かれやすい。だが実際には、合意は双方が歩み寄った結果である。

     日本は公式に「責任」を認めて謝罪した。法的に解決済みという意味で使ってきた「道義的責任」という言葉からの転換だ。政府予算から10億円を拠出したことも国家としての責任を明確にする措置だった。

     両国の背中を押したのは、慰安婦問題での対立が対北朝鮮政策での日米韓連携に悪影響を及ぼすほどになっていたことだ。日韓は合意を契機に関係を改善させ、安全保障面での協力も進められるようになった。

     日本はいまのところ過度に反発せず、合意の着実な履行を繰り返し求めている。北朝鮮情勢が緊迫の度を強めていることを受けた抑制的な対応だといえる。

     慰安婦問題を再び感情的対立に発展させれば、日本の安保政策に大きなマイナスをもたらす。文政権の対応と同じ土俵に乗らない賢慮が求められる。

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