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クローズアップ2018

山梨県の国有地 放置のち「たたき売り」 算定額、財務省次第

日本航空高校山梨キャンパスと旧国有地のイメージ図

 財務省が管理する山梨県内の国有地が、ずさんな管理の末に格安で地元の学校法人に売却された取引が判明した。日本航空学園に売られた土地は評価額の8分の1にまで割り引かれ、値引き幅は森友学園にも匹敵する。同省の幅広い裁量権を背景に、国民共有の財産が第三者のチェックを受けることなく、価格の妥当性を担保されないまま売り払われている実態が明らかになった。【杉本修作、金森崇之】

     「これまで何も言ってこなかったのにおかしい。学校の施設なのだから寄付してもらいたい」。2012年に会計検査院から国有地の処理を促され、財務省関東財務局甲府財務事務所の担当者は約50年にわたり放置していた土地の売却交渉をようやく始めたものの、日本航空学園の幹部から不満をぶつけられ、無償譲渡を迫られた。

     だが、国の財産の売却にあたっては、競争入札によって高値で売るのが原則だ。財務省は「保有する必要のない国有地は、厳しい財政事情を踏まえ、すみやかに売却し、財政収入の確保に貢献することが基本」との方針も掲げている。

     同省の研究機関「財務総合政策研究所」のまとめによると、15年度中に同省が売却した国有地は4293件計673億円。ただし、この価格は相続税評価額を基に帳簿に記載されている価額(台帳価格)で、実際の取引価格の実態は不透明となっている。

     未利用の国有地売却で財政収入を増やすという方針があるにもかかわらず、次々と値引きができるのは、財務局の担当者に幅広い裁量が認められているからだ。財務省が定めた国有地の価格を決める際のマニュアル「国有財産評価基準」には、「処理の促進を図る必要がある」場合は担当者が価格を決められる「特例」が設けられている。

     滑走路などキャンパス内の国有地の評価額(相続税評価額)は計約7180万円。農道や水路の形状のまま枝分かれして存在しており、財務局は他に需要がない場合に減額できる「需給修正率」(50%)を用いたほか、この土地に学園の「借地権」があったとみなして「借地権割合の控除」(50%)も適用。さらに教育施設への減額措置(50%)なども使って最終的に875万円まで価格を下げた。

     不動産コンサルタントの長嶋修氏は「財務省にフリーハンドが与えられている。何でもいいから相手の払える額まで値下げしたのではないか」とみる。長嶋氏によると、賃貸契約がなく、単に占有していた土地に「借地権」があるとみなす取引は民間取引では考えられないといい、「需要への見通しも職員のさじ加減一つだ」と断じた。教育施設への優遇措置についても、「国庫への収入を増やすため適用を縮小し、極力時価の取引を進める」との省内の申し合わせがある中で適用されている。

     今回のケースでは、学園側が長期間土地を占有していたことで「時効取得」を主張でき、財務省は「妥協するしかなかった」(幹部)と釈明するが、そうした事態を招いた背景には、時効を中断させる手続きすらしなかった同省側の「怠慢」があったと言える。

     広い裁量権を手にしつつ、ずさんな管理をしても責任を問われない財務官僚--。国有地の取引に詳しいある不動産コンサルタントは疑問を口にした。「我々はどんな不動産でも利益を出そうとする。国には、国民の財産を扱っている自覚がないのではないか」

    検証・情報公開が必須

     財務省近畿財務局が森友学園に大阪府豊中市の国有地を格安で売却した問題を巡り、会計検査院が昨年11月に「値下げの根拠があいまい」と指摘したことを受け、同省は国有財産を処分する際の手続きを見直す方針を示した。現在、有識者でつくる財政制度等審議会(財務相の諮問機関)で議論が進められており、売却価格の客観性などをいかに確保するかが焦点となる。これまで開かれた会議の議事要旨によると、特殊な取引は第三者による検証や情報公開が必要といった意見が出されている。

     森友学園のケースでは、約9億6000万円の国有地が、ごみ撤去費として8億円余値引きされ評価額の7分の1で売却されたが、財務省のマニュアル「国有財産評価基準」には、ごみ撤去費を差し引く手法について具体的な記載はない。財務省理財局は「細かな記載はなくとも、『禁止』と書かれていない以上、認められている」と解釈し、割引はマニュアルに沿ったものだと説明。昨春の通常国会で、財務省の佐川宣寿理財局長(現国税庁長官)も「法令違反はない」と繰り返し強調した。

     一方で昨年11月の特別国会では、森友学園側と近畿財務局の担当者とのやり取りを記録した音声データを基に、野党が財務省を追及。学園が希望する金額に近づけようと、財務局の担当者が、国の当初想定よりも深い場所にごみが存在したという「ストーリーはイメージしている」などと述べ、格安取引を国が主導したようなやり取りがあったことが明らかになっている。

     交渉が難航した際、買い手側の「言い値」に近づけていくような手法は、日本航空学園のケースでもうかがえるが、同省は個別の交渉内容について原則公表しておらず、国有地の取引が「ブラックボックス」とも言える状況になっている。

     見直しの議論ではマニュアルの抜本改革は論点となっていないが、長嶋氏は「財務省が全て決められる体制になっているから『そんたく』を疑われる。そんたくの余地がないように規定を見直し、値下げの理由をすべて公開するくらいのことをしないと信頼回復はできない」と指摘する。

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