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読書日記

著者のことば 柳家さん喬さん 師匠への恩返し

 ■噺家の卵 煮ても焼いても 柳家(やなぎや)さん喬(きょう)さん 筑摩書房・2160円

     五代目柳家小さんに入門し、昨年で半世紀。その高座は円熟味を増しながらもみずみずしさを失わない。本書は入門を願い出た日からの師匠との思い出や、弟子11人への思いを高座同様飾らない筆致でつづる。

     「自分では50年だなんて意識してなくて。区切りをつけるのがあんまり好きじゃないんです」。と言いながら、昨年は紫綬褒章受章や文化庁文化交流使として北米で活動するなど、大きく注目される年となった。「いつの間にかそこに立たされていて、思わないところで皆さんがいろいろしてくださった。節目って自然につくもんだなって思いました」と振り返る。

     本書は4年前にウェブで連載を始めたものに加筆。「落語キッチンへようこそ!」という連載時のタイトルは実家が洋食屋だったことにもちなむ。「料理も落語も、確かに調理人が腕を振るわないといい味にならないし、いい噺(はなし)にもならない。両方になぞらえました」。食べ物が出てくる落語の話のほか、修業時代に小さんの食事番をしていた時の楽しいエピソードもちりばめられている。「料理は、門前の小僧ですよね。酒のさかなのようなものはよく作りました。油揚げに納豆を入れて焼くいなり納豆なんて、今はよく居酒屋にありますけど、僕は前座のころにやっていました」

     小さんの弟子として、また弟子を抱える師匠として、失敗談も交えた温かいまなざしが貫かれる。書籍化にあたっての「噺家の卵煮ても焼いても」というタイトルが象徴的だ。「卵って割らなきゃ何もできない。調理の仕方はご家庭の奥様にしても、ほんとにいろんなものを作る。調理の源みたいなところがあると思います。噺家も卵から、どう育っていくのか。ちゃんと卵を産むニワトリになってくれればいいなあと思うんですけど。卵は雌しか産まないけど(笑い)」

     書きながら、改めて師匠のことを思い返すことが多かった。「師匠は弟子の名前を残すことはできないけど、弟子は師匠の名前を残すことができる。そういうことが、弟子の師匠への恩返しだと思う。これを読んでいただいた方が、小さんの匂いを少しでも感じ取ってくだされば幸いですね」<文と写真・濱田元子>

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